お知らせ・イベント

  • お知らせ・イベント全体一覧ページを見る
  • お知らせ一覧ページを見る
  • イベント一覧ページを見る

【特集】旅する藤里 「工房&農家民宿 ブナの森」後編

【後編】




 粕毛地区では約3年前より農家民宿(民泊)に取り組み始め、現在6軒が行っています。そのうちの1つ「農家民宿ブナの森」を営む竹中正さんは、実は茨城県出身で自宅が千葉県にありますが、数年前よりこの粕毛地区にある妻の実家で趣味の木工を楽しみながら暮らし、農家民宿も行なっています。

 正さんに前編に続き、農家民宿のことや藤里ついて思うこと伺いました。






民宿ブナの森の庭からは藤琴川と藤里駒ヶ岳がよく見える




地元の仲間が藤里へ釣りやキノコ・山菜採りに訪れる


 退職したらやろうと当初思っていたことは、木工の他に、山登り、育林、釣り、自転車、カメラがありました。自転車を買ったのですが、車を買ったら乗らなくなってしまいましたね(笑)。あとはカメラを退職祝いで頂いたのですが、オート機能を使って撮影するくらいで、撮影に凝ったりはしていないです。

 山登りは、体を悪くして2年前からあまりやっていません。行きたい気持ちはあるのですが。釣りはクマが出る影響もあって、他の人に声をかけてもらったら行くようにしています。私の地元の茨城・土浦から昔の仲間4、5人で6月か9月に藤里に来て、2、3泊していきます。

 その仲間が来る時は釣り、キノコ・山菜採りに行きますね。キノコ・山菜採りの楽しさは、彼らから教わりました。普段からいろいろなところに釣りがてら行って、近くの山で山菜やキノコを採ってきます。

 採ったキノコや山菜はここで食べるのと、お土産に持って帰るのと半々くらい。小さいビニール袋2、3枚を持って渓流沿いを歩いていくと、ナラタケ、ナメコ、ブナシメジがあったりしてね。9月下旬、禁漁の直前で涼しくなっているタイミングで、基本的には採ったキノコを鍋に、山菜を天ぷらやおひたしにして食べます。







宿では粕毛地区のお母さんたちの手作り料理が味わえる




植林した木の200年後を想像して楽しむ


 林を育てるためにしているのは、年3回の草刈り、剪定、虫がいたら消毒。1回の草刈りに15、16時間はかかります。5月のまだ涼しい時期だと朝から夕方までやると2日でできます。今の夏の時期は朝2時間くらい。刈り払い機を使ってやります。1日中やるのは大変な時期です。

 体力が続くうちはいいんですけれどね。折りたたみイスに飲み物とおやつを持ち込んで、給油の度にしばらく休んで様子を見ながらやります。後ろを振り返ってきれいになっているとうれしいですね。

 雑草のたくましさはすごいです。放っておくと雑木も生えてきますから。4反歩くらいの林に、ブナ、ナラ、カエデ、クルミ、ケヤキ、ホオなどを植えていて、ブナ、ミズナラが大半を閉めています。自分が木工で使う分は育てておこうという気持ちもあります。

 植林してから5年が経ち、ブナの背丈は3、4メートルになりました。枯れたものもあるし、ネズミにかじられたものも。この林を見て200年後の姿を想像したりするのもいいですよ。このなかでなんぼ残るだろうって。










草刈後の一杯もまたたまらないという





素泊まり担当として農家民宿をスタート


 私は元日が誕生日で家族も集まるので、正月は向こうの千葉で過ごしています。正月明けから藤里に来たのは、今年が初めて。それまでは2月から藤里に来ていたのですが、1月のうちから毎日雪かきした方が楽かなと思って。あと、農家民宿で小学生が泊まる予定もあったので。

 寒いのは大丈夫です。たくさん着込めばなんとかなるし。基本的には冬の間も木工をやりたいのですが、手がかじかんでかんなが握れないことも。冬の間は雪かきが大変になりますが、木工のために図面を引いたりはできますから。山のように積もった雪かきするのは楽しいというより、そういう感情を押しやって黙々とやる。草刈りにも木工にも通ずるものがありますね。そういうのが好きなんでしょうねえ。

 民泊は3年前から、粕毛の人たちと一緒に始めました。料理を出せるわけでもないので、最初はそんなつもりもなかったのですが、半ば強引に引き込まれまして(笑)。食事に関しては、近所の方が手伝ってくれるということで素泊まり担当ならできるかなと。あと、岩手・遠野の研修で農家民宿を初めて体験してみて、このくらいならできそうだなとも思って。

 その農家民宿は、自宅をとてもきれいにして、東京にも出荷しているブルーベリー農家で、料理も飾らず普段食べているものを出してくれました。品数は普段よりも少し多いと思いましたが、身近な食材で出してくれた印象でした。







粕毛地区の名物わんこおどりは思わず楽しくなる





大学生、親子、山登りのツアー客といろいろな人々が宿泊


 民泊を始めて、秋田市から来た学生たち7人を泊めたのが最初でした。飲める人は一緒に飲みながら、私自身がどんな生活をしているのか話をしました。どちらかというと彼らの話を聞く方が多かったかなあ。その後も学生さんたちは、この地区の雪祭りのイベントの手伝いや、蛍の頃の小学生の宿泊体験のサポートなどで来ていますね。

 また、関東方面から山登りに来た年配の団体の一部が泊まったり、昨年の夏には藤琴のホコ天のイベントに出演した男性バンドグループの3人が泊ったり。初対面の人と話をするのは、面白いですね。

 あとは、損保ジャパン日本興亜主宰の秋田パートナーシップ・白神の森の倶楽部の共催で岳岱自然観察教育林の散策や植樹のツアーがあって、先週末には秋田市から来た親子3人が宿泊しました。私の孫と同じ4歳の子供で、たくさん話をして元気をもらいましたね。男の子だけれどしっかりしたおしゃべりな子でした。

 団体が民泊するとなると、粕毛にある交流センターで食事をすることが多いのですが、この前の親子のツアー時に選挙で使えなかった時には移住お試し住宅で食事をしました。スタッフ、お母さんたちを入れたら全部で50人くらい居たかなあ。大学生がイワナを焼いて、だまっこ汁、ゼンマイの煮物、ミズの漬物などを出しました。

 私もそのツアーで木工のプログラムを1時間半担当して、巣箱作りを親子でしました。30人分の巣箱作りキットを、10日をかけて設計から試作までして用意。柔らかくて加工に向いているスギ材で作りました。部材はカットしてあるので木ネジで留めるだけ、ドライバー1本あれば作れる簡単仕様にしました。

 皆さん楽しんで作ってくれましたね。大人も必死になってやっていました。このツアーは3年続けて開催されて、巣箱作りは今年からでした。その時に作ったものが、丸上木材さんのカフェ岳の向かいに取り付けてありますよ。

 私の家で民泊をする場合は、食事は近所の方に作ってもらって出しています。町の若いお母さんたちにも参加してもらえたらうれしいですね。そんなに頻度が多いわけでもなく、ちょうどいいペースで楽しんでいます。






地区のお祭りはついつい話もお酒!?もはずむ




藤里は人付き合いが濃厚な場所


 この粕毛地区では、ブラックベリーの栽培・加工をしたり、ふじさと元気塾(特定非営利活動法人)が手がけている養殖イワナの甘露煮を作っています。あとは、自治会の活動があったり、神社の草刈りがあったり集まって、その後飲んだりしていますね。

 藤里は、人の付き合いが濃い場所だと思います。千葉の自宅に居る時は、少年サッカーの付き合いで飲むくらいでした。藤里で飲むと、いろんな人の話が普通に出てくるので、濃密な世界だと感じていますね。でも、そういう場に私が行くと皆と同じように受け入れてもらえて、こちらから言えば親切に対応してくれたり、相談にも乗ってくれたりします。

 木材が欲しいと相談したり(笑)、農家民宿関連で1年に一度の研修の申し込みを一緒にしてもらったり。また、斜向かいの酒屋さんにお酒を買いに行って、話をすることが多いですね。ご主人は釣りの達人なので連れて行ってもらったり、つり竿の直し方を教えてもらったり、イベントの後で生ビールが置かれている時には、「ちょっと飲んでいきなよ」と声をかけてもらって、一杯飲むつもりが座って話し込んだり。たまには町の店に飲みに行くこともありますよ。

 藤里での暮らしは、自分でやりたいとことをやっている時間。ただ、体力が落ちていくなかで、木工も林の草刈りも体力が要りますから、できるうちにやっておけたらいいなという気持ち。それで毎晩お酒を美味しく飲めたら幸せですね。晩酌はまず欠かせないですね。

 今後は、今の暮らしに加えて、月に1、2度山登りに行けたらいいですね。青森の白神岳には、何年か続けて行ったことがあります。4月から5月までは、ブナの足元の雪に穴が空いている様子が見られたり、またブナの新緑の緑がいいいですね。






車で1時間ほどにある田苗代湿原のミズバショウ





日常に溶け込み過ぎている藤里の地域の宝


 50年来藤里に行き来して、山と田園風景、田植えから稲刈りまでの景色は変わらないし、好きですね。変わったなあと思うのは、粕毛の交流センターのあたりにプールがあって子供たちがワイワイ騒いでいた記憶があるし、素波里園地の施設が数年ごとに変わってきていましたよね。モノレールみたいな自転車があったり、パターゴルフ、アスレチック冒険コースがあったこともありましたね。

 6月になると藤里内のあちこちにミズバショウが咲くでしょう。誰も関心がないようで、もったいないなあと思っています。もう少し環境を整備したり、ミズバショウの群落をもう少し大きくしたり、またホタル鑑賞とセットにするだけで観光スポットになるんじゃないかなと毎年思いますね。ここでは当たり前過ぎてしまうのかもしれませんが、個人的にはとても好きな花です。

 また釣りも日常の生活のなかに溶け込んでいるからか、宣伝したりしないですよね。釣りのマニアは、自分たちで情報を得て集まってきますよね。今のところ、釣りに関する看板も何もないので、看板を立てるだけでもここで釣りができると初心者に気づいてもらえるのではないかと思います。

 木工をやるには環境的に藤里は適していますね。音、ホコリ、ごみでも迷惑をかけないし、材料も手に入りやすいですから。自然の中で生活すると日々のビールが美味しく、お金を出しても買えないものがここにはあると思います。人の濃いお付き合いも面白いです。今の時代だからお店がなくても、何でもネットで購入することができますからここでの暮らしに不便さを感じません。精神的にも穏やかに居られる場所が藤里だと思います。







藤琴川からの気持ちのいい風が抜ける部屋



*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496















     ライター : 久保田真理(くぼた・まり)
  
   ライフスタイル誌の編集者、オーストラリアでの写真留学を経て、フリーランスとして独立。国内外の取材を通じて、多様な生活や文化の魅力を発信する。秋田市生まれ、茨城・千葉育ち。趣味は、日本酒、トレイルランニング、ソウルミュージックの世界に浸ること。

 


知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。

このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。

藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115


*白神山地ふじさとのストーリーが届くフェイスブックはこちらです*
フォローすると定期的にストーリーが届きます

https://www.facebook.com/fujisato.syoukoukankou/

  • 登山にスキー、白神山地の散策など
    ほかでは味わえない大自然の遊びがいっぱい!

  • 藤里の澄んだ空と水は感動の美しさ。
    露天風呂や地元の料理を楽しめます。

  • 大量にはない、手ざわり感ある品々。
    豊かな水が生み出す自然の美味しさです。