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【特集】旅する藤里 「Café 岳」前編

【前編】









オリジナルの岳ブレンドは「ナガハマコーヒー(秋田市)」にブレンドしてもらっている。







 藤里町の秋田県道317号線を車で走ると、道路沿いに大きな屋根が印象的なログハウス風の建物が見えてきます。自然光がたっぷり差し込む店内にはアメリカ製の薪ストーブがあり、コーヒーを飲みながらおしゃべりに、読書にと思い思いの時間を過ごすことができます。

 この『Café岳』を営む武田佐知子さんに、カフェを始めることになったきっかけや、食への思いなどについて伺いました。





ログハウス風の建物と薪が印象的。入口の木彫りのふくろうも目印。







NPOの拠点としてカフェを始めることに


 白神山地が世界自然遺産になって、いろんな人が訪れるようになってきて、休めるところがあるといいなあと話をしていたけれど、まさか自分がやるとは思っていませんでした。アルバイトでも接客をしたことなかったのですが、主人(武田英文さん)がNPOの拠点を立ち上げるということになって。その頃東京で働いていた娘も帰ってきて一緒に関わることになったんです。

 娘は飲食店でアルバイトをした経験があったので、二人でやってみないかという流れでこの『Café岳』を始めることになりました。やるのであれば、自分が食べて美味しいと思えるものしか出さないようにしよう、既製品は使わないで自分で手をかけてやろうと決めました。コーヒーの豆の仕入れは、秋田市で同級生がコーヒーを扱っていたところから入れることにしました。

 主人は1948年に設立した丸上木材という会社を約30年前に父親から引き継いでやっています。二ツ井にあったのですが、道路工事にかかって土地が狭くなったので、今の場所に移ってきました。NPOは平成21年『あきた白神の森倶楽部』という名前で立ち上げました。

 森と人を結びつける活動で、白神山地の案内や植林の体験活動等のほか、中国でも植林をしています。以前は別の団体がやっていたのですが、事業を引き継いでここ6年くらい続けています。それは、木を切ることを生業にしてきた主人がやりたかったことで、木を植えることをしないといけないという思いがありました。Facebookで活動の様子を見ることができますよ。











手間にこだわるが、私はシェフでなくシュフと語る佐知子さん。






 NPOを立ち上げた10年前頃は、色々なNPOがあちこちで立ち上がったものの、自然消滅になるものが少なからずあると聞いていました。その原因の一つは、拠点がないことにあるのではないかとなって、主人が拠点を兼ねてカフェが欲しいと思ったのがきっかけでした。

 ここは丸上の事務所だったのですが、内装を変えて今の状態に。私は開店のためにコーヒーと紅茶の教えを受けに、秋田市まで通いました。コーヒーは、豆を譲ってもらうことになったナガハマコーヒーに、紅茶は愛好会の人を紹介してもらっていました。

 コーヒーのいろんなブレンドを試飲してこういう感じでとお願いして、「岳ブレンド」が誕生しました。美味しいと言ってくれる人が多いですよ。

 開店当初は、スペシャリティコーヒーを仕入れ、コーヒープレスも使ったりもしたけれど、需要が少なく、鮮度が命のコーヒーは、焙煎から時間が経つと美味しくなくなるので、ブレンドだけにしました。











娘と決めたブレンドは、酸味を抑えた飲みやすさにこだわっている。







主婦歴30年、手間をかけることを大切に


 食べ物は試行錯誤の結果、廃りが出ないもの、そういう調理方法ができるもの、あまりお待たせせずに出せるものにしました。ここは、お客さんが来る時は来る、来ない時は来ないという感じで、10年経っても読めない。人が来なくて売れなかったら食材を捨てないといけないので、そこは続けていけることを考えてメニューを考えました。

 ハンバーグとカレーはオープン当初から変わらず。パスタはしばらく自信がなくて、やっていませんでした。私自身はパスタが好きで自宅で結構作っていたのですが、店で出すには今一自信が持てませんでした。手際よくできるようになってきて、パスタを食べたいというお客さんもいたので、そろそろやってみようかとなって。火口の問題もあったのですが、一つ増やすことにして、パスタも始めることにしました。最初、キノコのパスタ1種類だったのですが、当時流行りの喫茶店のナポリタンを出したことも。

 カレーはチキンカレー。既製のルーは使わず、カレー粉を使っています。最初カレー粉は1種類でしたが、調べたらいろいろあったので、取り寄せて試して、自分で3種類をブレンドすることにしました。

 タマネギをかなり使いますね。ルーのとろみの大半は、タマネギとニンジン。タマネギはよく炒めないとタマネギの臭いが気になるので、丁寧に時間をかけて炒めています。ヨーロッパ風というよりもインド風のカレー粉を使用しているので、結構辛いですよ。タマネギを炒めた日は、髪の毛は勿論、下着までタマネギの匂いがつくほどです。

 ハンバーグも自分で作っています。今は既製品も結構美味しいけれど、Café岳の料理の基本は家庭料理です。専門的な料理の勉強はしたことのない、ただ30年の主婦の経験しかない私のできることは、忙しい毎日の生活の中では、なかなかかけれないひと手間、ふた手間をかけることです。焼きハンバーグだと火の入れ加減難しいので、煮込みにしました。ソースも手作りで、野菜4種類をベースにしています。そういう私も家では既製品を使うこともあるんですよ。

 あとは、ラタトゥイユ(フランスの郷土料理で、野菜の煮込み)のパスタもあります。これは、ラタトゥイユのレシピを見つけ、作ってみたところ、これはパスタソースにもなるんじゃないと思って、途中から加えました。単品でも食べられるし。メニューは、テレビや新聞を結構見て、何か新しいメニューや工夫がないかチェックしています。








10年間改良し続けているカレー。ごはん大盛を頼んでも料金は同じ。持ち帰り可。







料理や食べ歩きを楽しんでいた東京時代


 私は、秋田県・大曲出身で、結婚して二ツ井に住むようになりました。子どもは、娘1人と息子が2人。『Café岳』を始めたのは、娘が26歳か27歳の頃でした。私自身食べるのが好きな家庭で育って、料理を本格的にするようになったのは主婦になってから。学生時代から自炊していましたけど。

 学生時代に上京して、卒業後今でいう広告代理店と印刷会社が一緒になったようなところで事務の仕事に就いて、9年ほど東京で暮らしていました。最初は本郷にいて、それから都立大学、恵比寿に引っ越して、そしてまた文教区へ。当時から歌舞伎が好きだったから、歌舞伎座にまっすぐ行ける沿線を選んでいましたね。

 小さい台所だったけれど友人集めて作って食べたりしていました。人に食べさせて、美味しいと言われるのが好きでね。青椒肉絲を作ったり、うちからきりたんぽの材料を送ってもらって作ってみたり。あとは、煮しめみたいなものを作りました。

 あとは、月に一度、友だちと美味しいものを食べる日を決めて食べ歩いていました。水炊き、天ぷら、昔ながらの洋食屋、お好み焼きを食べに行きましたね。お好み焼きは、それまで食べたことがなくて。

 最初に学生寮に入って門限があったけれど、こっそり抜け出して屋台のラーメンを食べに行ったことも。ドキドキしてね。田舎育ちだったから、そういうことが新鮮でした。寮のご飯が美味しくなかったのでね。学業よりそういう思い出が楽しかったように憶えています。








家庭では手間だと思うところに手間をかけている。もう一つの看板煮込みハンバーグ。





(後編へ続く)

*旅する藤里「Café 岳」 後編
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2093



*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496












     ライター : 久保田真理(くぼた・まり)
  
   ライフスタイル誌の編集者、オーストラリアでの写真留学を経て、フリーランスとして独立。国内外の取材を通じて、多様な生活や文化の魅力を発信する。秋田市生まれ、茨城・千葉育ち。趣味は、日本酒、トレイルランニング、ソウルミュージックの世界に浸ること。

 


知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。

このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。

藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115


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  • 登山にスキー、白神山地の散策など
    ほかでは味わえない大自然の遊びがいっぱい!

  • 藤里の澄んだ空と水は感動の美しさ。
    露天風呂や地元の料理を楽しめます。

  • 大量にはない、手ざわり感ある品々。
    豊かな水が生み出す自然の美味しさです。