【後編】
「白神山地 ホテルゆとりあ藤里」は、藤里町の中心部から少し離れた自然豊かな環境にあるホテルです。世界自然遺産「白神山地」ついて知ることができる施設「白神山地世界遺産センター(藤里館)」のすぐ近くにあります。さまざまなタイプの部屋が21室あり、レストラン、温泉大浴場などを完備しています。
2016年より当ホテルの支配人を務める、西里茂さんに、ホテルの特徴やこのホテルにかける思い、ご自身のことを伺いました。
支配人の西里さんは、渓流釣りの経験が豊富
(前編よりつづく)
世界自然遺産を見てみたいお客様がいらっしゃいます。
個人のお客様の宿泊の場合、世界遺産の白神山地は1度は見ておきたいと白神山地を目指してくるケースが多いですね。ゆっくり楽しみたいと2泊される方が多くなってきました。町内をはじめ、ここから1時間ほどで行ける場所をご案内するようにしています。町内では、秋田県指定天然記念物に指定されている「大沢大ケヤキ」や「権現の大イチョウ」がおすすめです。藤里には四季折々の顔があるので、季節ごとに楽しみがあります。
新緑と紅葉の季節に観光客が多く、お盆のころには帰省客が多くなりますが、雪が降ってしまうと静かになってしまいます。秋田白神ガイド協会の方々と一緒に、里山トレッキングなど雪を絡めた催しが今度はできたらと思っています。
私は、長年の飲食の経験をここで生かしていきたいです。秋田の方々は、待つのに慣れていないので、混雑していたらその旨案内しますが、15分以内で出すように心がけています。目新しさを提供することもホテルの役割だと思っているので、メニューを定期的に入れ替えたり、これまでは定食ものが主だったのですが、気軽に食べられる丼を増やしたりと飽きさせないよう工夫しています。
温泉施設を利用し、食事をされる日帰りのお客様もいらっしゃいます。コーヒー1杯でもお楽しみいただけるよう、1杯ずつコーヒーを入れるマシーンに変えたり、地元にケーキ店がないので業者が製造するものにはなってしまいますが、その中でもより美味しいものを仕入れたりして、お客様に喜んでいただけるよう少しずつですが努めています。
ホテル内のレストラン。白神山地ワイン(ヤマソービニオン種・赤ワイン)もここで飲める
地元の方々を中心に、宴会のご利用も。
個人での宿泊や日帰り利用のほか、地域の方々の宴会、県内の研修など、いろんな用途でご利用いただいています。
申込みの段階で、年齢、男女の割合、アレルギーの有無などを幹事さんに聞くようにしています。女性が多ければ、デザートやコーヒーをつける、お酒を飲まないのであればノンアルコールのドリンクを用意する、男性が多く日本酒をたくさん飲むと分かれば好まれそうな銘柄を選ぶなど、おもてなしできるよう心がけています。
県外からのお客様に対しては、冬はきりたんぽを、夏はアユや、横倉の養殖のイワナをお刺身にして出したり、秋はきのこを使った料理を出したり。東京からのお客様であれば地元のものを用意するようにしています。急に用意できるわけではないので、事前に多めに準備して、当日の変更にも対応できるように心がけていますね。「できません、ダメです」とは、最初から言わないようにがモットー。できることもあるので、まずは相談するよう職場スタッフにも伝えています
30、40代の若いグループの方々にもご利用いただきたく、ドリンクにカクテルを出したり、家庭料理とは違った洋食や中華のメニューも出していければと思っています。でも、自然の中にあるホテルなので、東京のホテルのような小洒落たものは出せない。だから、自然あふれる静かな環境で、安心して過ごせるホテルにしたいですね。しかしながら、馴れ馴れしい感じはなく、リクエストには真摯に対応して、家のようであって家ではない雰囲気を保ちたいと思っています。
フロント横にある売店では日本酒も販売。秋田の地酒を取りそろえる
改めて思う、藤里の良いところ。
やはり、自然がいいですね。すぐ近くにある「銚子の滝」は神秘的ですし、「岳岱(だけだい)自然観察教育林」のブナ林には手つかずの自然が残っています。ブナ林に行く度に、大木を見て、雪が厳しい中残っていて、自然ってすごいなあと感心してしまいます。また、あれだけの胴回りの木は見たことがないので、「大沢のケヤキ」はやはりすごいなあと思います。
あと、藤琴川の透明度もすごい。大雨が降っても、数日でまた透明に戻ります。浄化作用が早い川にアユが集まってくるので、2017年もアユ釣りのお客さんが多かったのですね。お盆前は特にすごかった。東北はもとより、関東からもたくさんいらっしゃいました。
秋田に移住して良かったと思っています。四季がはっきりしていて、雪が大変な分、春の楽しみがあります。山菜も食べたことがなかったのですが、親戚に山に連れて行かれ、ウド、アイコ、シドケ、タケノコを教えてもらいました。今では、渓流釣りの帰りに山菜を採ってくるまでになりました。
釣りもできるようになる、新緑の季節の6月が一番好きですね。もちろん仕事は一生懸命やりますが、他のスタッフに任せて、しっかり休める現場になるよう努めています。メリハリのある生活が大事です。東京にいるころも釣りをしていましたが、2時間かけて行っていました。ここでは30分走れば、目の前の小川にヤマメがいるような環境で、渋滞もなく、時間を気にせずに過ごせます。
個人名を覚えてくれて、「あなたがいるから来たよ」とか「また来るよ」とか言ってもらえる時が、やっぱり一番うれしいですね。だから、スタッフには「常連のお客さんはなるべく名前で呼びなさい」、新しく来たスタッフには「あの人〇〇様っていって、こういう人ですよ」と伝えるように指導しています。名前を覚えられていると、人はうれしいと思うんですよ。ですから、逆にスタッフを指名して来てくださればうれしいですよね。
自然の中にあるホテルでは、東京のような小洒落たおもてなしはできませんが、静かでアットホームなところをお客様に喜んでいただけるよう、スタッフ一同で取り組んで参ります。
(施設編へ続く)
*旅する藤里「ホテルゆとりあ藤里」 施設編
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/1788
*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496
ライター : 久保田真理(くぼた・まり)
ライフスタイル誌の編集者、オーストラリアでの写真留学を経て、フリーランスとして独立。国内外の取材を通じて、多様な生活や文化の魅力を発信する。秋田市生まれ、茨城・千葉育ち。趣味は、日本酒、トレイルランニング、ソウルミュージックの世界に浸ること。
知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。
このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。
藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115
☆白神山地ふじさとのストーリーが届くフェイスブックページはこちらです☆
フォローすると定期的にストーリーが届きます
https://www.facebook.com/fujisato.syoukoukankou/