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【特集】旅する藤里 「憩」後編

【後編】





 藤里町の中心部、藤琴地区にありながら、目の前に堰があるのどかな風景。季節をいち早く取り入れたつまみや、新鮮な魚介を使った寿司などを供する「憩」がこの地に店を構えてから22年が経ちました。

 季節を先取りすること、寿司に対するこだわりなどを伺った前編に続き、店主の金野栄さんにお客さんとの思い出、町の人々の宴会の様子などについて伺いました。









休憩時間、憩の入り口に掛けられていた看板。栄さんの優しい人柄が伝わってくる。






旬を先取りするのが、職人としての誇り


 地元の集まりで使われることも多いです。年配のお母さん方の女子会が多いかな。若いお母さんにも利用してもらえたらうれしいけれど。女性たちに喜ばれるよう、工夫しています。以前は、アユやカレイの唐揚げを付けていたのが、女性たちには天ぷらの方が喜ばれるかなと思って、山菜の天ぷらを付けたり。食べ応えもあるので。山菜のある時期になってはしまいますが。

 出始めの食をなるべく早く出したい気持ちがあります。職人としての誉れ、職人としての自信になりますから。「最初にここで食べられるよ」という店でありたいですね。都会から来る人にも食べさせてあげたいから、旬の終わりになっても一生懸命探して出すこともありますね。春先に東京から藤里に釣りにやって来るグループがいるのですが、都会ではなかなか食べられないようで、楽しみにしているそうです。

 4月のサクラマス解禁になると、釣りのグループは仕事そっちのけでやって来ます。3年前に大館のホテルに泊まっていた人がこちらに来るようになり、土佐旅館に泊まったのがきっかけでうちに来るようになりましたね。私の話す秋田弁が分からなかったみたいだけれど、こちらはめげずに話して(笑)。うちの奥さんは東京にいた経験があるから、通訳してくれて。

 それが楽しかったんじゃないかなあ。寿司屋なのにピザを出されたとか、言葉は分からないけれどなんかおいしいものをリーズナブルな値段で食べさせてくれる、大した面白いところがあると仲間に話して、それからは仲間も一緒に連れて来るようになりましたね。










メニューの一部。寿司はもちろん、幅広い世代に好まれるメニューを取りそろえる。







釣りの人から、釣った魚を調理して欲しいと頼まれることも


 昨年は釣りのグループの人たちが10人近く来て、山菜を出したり、釣った魚を加工してあげたり。塩を振って焼く以外にも、三五八漬けにしたり(麹の漬け床で漬けてから焼く、秋田、山形、福島の郷土料理)、生クリームで洋風の焼き方をして、いろんな食べ方があると喜んでくれました。

 帰る時に釣れたやつは置いていってくれますね。一度冷凍したらいいけれど、そのままの刺身では皆さん食べませんね。昆布締めにして、押し寿司にして出した時には、おいしいと喜ばれました。食べてみたいと思ったものはやって見るけれど、できないことは断ります。時には名前の分からない魚が来ることもあります。

 コイの洗いを造ってという人もいて、調理の手間はかかるけれど手間代は取れない(笑)。氷でガリッと締めないといけなくて、半端な締め方だとおいしくない。でもこの前で、コイは2回目くらいだったな。

 4月から6月までサクラマス目的で来る釣り人が多くて、新潟から来る人もいる。ここ以外にも、山形にも行くみたいだよ。うちの奥さんが東京に行った時、釣りのグループの皆さんが集まって、食事に招待してくれて。いぶりがっこ、日本酒をお土産にたくさん持って行ってたね。










カリッと揚がったアユのカラアゲ。







日本酒はいろんな嗜好に応えられるよう、取り揃えるように



 日本酒は鷹巣にある酒屋から仕入れています。お歳暮とかお中元の時期になると、お酒を送る人であふれていることもあるね。県外ナンバーも見かけます。新政のno.6(ナンバーシックス)は、女性向きだね。60歳過ぎの男性には、山本を出したら口に合っていたみたい。役場の皆さんが宴会でここを使ってくれる時にすごい量のお酒を持ち込むんだけれど、そのお酒を見ると今のトレンドがあって勉強になるね。

 毎年、法政大学のボランティアサークルの人たちが藤里に来ていて、先日も粕毛で民泊をしている学生4人が、ここに飲みに来たことがありました。地域おこし協力隊で常連さんの男性がいたので学生の相手をしてあげたり、いろいろとサービスをしてあげたら、とても居心地がよかったのか、翌日も夜10時ごろ1時間くらい行きたいと電話がきました。

 カウンターがあるからふらりと一人で飲みに来る人もいるし、何十年ぶりに訪ねて来る人もいます。元々学校の先生で今は漁師をしている人が、バスケットの試合があれば遊びに来て立ち寄ってくれたり、高圧電線張りの工事で藤里に滞在していた愛媛の人も山歩きが好きで今でも付き合いがあったり。










女将のるり子さん。藤里のことを質問すると、いろいろなことを教えてくれる。




職人のこだわりというよりも、お客さんにおいしく食べてもらいたい



 おいしく食べてもらえればいいなあという気持ちが強いので、あれは駄目コレは駄目というこだわりはないです。お客さんのリクエストを聞いて、その人に合ったものを出す、喜んでもらう。

 山菜とかナスの寿司とか他にはあるけれど、自分ではおいしいと思わないので出さないなあ。なんこ(藤里の郷土料理、馬のモツ煮)も小さい時は食べられなかったし、山菜も食べられなかったけれど、上手に料理してくれる人がいて食べられるようになったね。

 地元の人はお酒込みで、4000、5000円で宴会を頼む人が多いかな。3000円の時もある。飲みたい人に合わせておつまみを用意することもあるし、一人1000円分のつまみを用意してあとは単品で注文するケースもありますね。女性の集まりの時は、寿司、天ぷら、煮物つけて2000円が多いかな。3000円になれば、まだ出るの!?と言われます。3000円になると、茶碗蒸しつけたり、寿司を多めにしたり。男の人がいれば焼き鳥をつけることもありますね。あと、大盛りの千切りサラダにかけるカレードレッシングも人気です。意外性もウケているいるみたい。

 あと、特徴的なのは、お通し3点盛り。鷹巣のお店に見学に行った時に、見つけました。その店主が、お客さんは嫌いなものには手を出さないけれど、3点だったら何かには手を出すからと話すのを聞いて、いいなあと思って、自分の店でも取り入れました。3点作るのも大変だし、余っても大変だけれど、仕入れた素材はおいしいうちに食べて欲しい気持ちが強いから、3点盛りを続けています。






突き出しの3点盛り。厚焼き卵、マグロのとろろ掛け、タコの和えもの。どれももちろんおいしい。





 晩酌セットは2年くらいやっています。気軽にお店に来てくれるきっかけになればいいなと思って。3点盛りともう1品、飲み物2杯がつくセットです。飲み物はノンアルでもOK 。遠くから来た人がよく注文していますが、地元でもよくこのセットを頼んでくれる人がいますよ。







お得な晩酌セットは1,300円。東京ではあり得ないサービスの内容に驚く。





自分の代で終わってもいいと思っているけれど、人がいれば


 出前をやることもあるし、お昼のお弁当も実はやっています。寿司にサラダ、味噌汁付きで500円。前々日まで連絡してもらえれば確実に用意できるし、数が多い時は早めがいいなあ。10個限定でやっているけれど、それ以上を頼まれて断れず……。議会の会期中に、町長から注文が入ることもありますね。

 お店で食べると手がかかることもあり、出前だと500円で済んでいいね。原価ギリギリだけれど。お客さんの立場なら500円がいいでしょう。食べたことがある人からは気に入ってもらえるみたいで、また注文が入ります。

 趣味はカラオケ。毎週火曜日に放送している歌コンを録画して、自分に合ういい歌があれば練習しています。最近は、五木ひろしの恋歌酒場がよかったなあ。店が休みに時に歌いに行って、仲間と点数を争ったりいます。仲間は中学時代ブラスバンドにいたので音程が安定しているのか点数で負けてしまって……。俺は野球をやってきたからなあ。細川たかしの歌は難しい。何度歌っても70点ぐらいだな。きれいな高い声が出るよな。

 3人いる息子をなんとか外に出すために憩を建てたから、自分の代で終わってみていいと思っています。自分はこれしかできなかったから。人がいれば、誰かに継いでもらってもいいとは思うけれどね。







日本酒にこだわりのある栄さん。秋田の自慢の酒をいつも出してくれる。





*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496














     ライター : 久保田真理(くぼた・まり)
  
   ライフスタイル誌の編集者、オーストラリアでの写真留学を経て、フリーランスとして独立。国内外の取材を通じて、多様な生活や文化の魅力を発信する。秋田市生まれ、茨城・千葉育ち。趣味は、日本酒、トレイルランニング、ソウルミュージックの世界に浸ること。

 


知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。

このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。

藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115


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    露天風呂や地元の料理を楽しめます。

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