【前編】
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能代市二ツ井から藤里町中心部に向かう道中に佇む、ログハウス風の「キッチン岳(だけ)」。以前営業していた「カフェ岳」が2022年に閉店したあと、数年間の空白を経て、2025年に再びオープンしました。現在の店主は桂田俊彦(かつらだ・としひこ)さん。町内に食堂が少なくなりつつある状況を寂しく思い、建設会社を退職して「キッチン岳」を創業した経緯や、メニューの工夫などについて話を伺いました。

キッチン岳の店主・桂田俊彦さん
建設業から一転、飲食店のオーナーに
桂田俊彦(としひこ)です。昭和36年生まれです。この店を始める前は、建設会社に勤めていました。43年間、建設業一筋でしたね。高校を卒業してから、今は県立大学になってますけど、当時の県立農業短期大学の農業工学科に入って、主に測量とかを習ってました。その頃は就職難でね、もう昭和の話ですけど。大学で習ったというのもあって、そのまま建設の仕事に就職しました。
実家は米農家でした。だから、会社のほうも忙しかったけども、家の農業もそれなりに手伝って少しずつ覚えていきましたね。会社はいくつか移ったけれど、最後に勤めたところには17年間いました。で、歳も歳だし、この先何年続けられるかって考えた時に、まあそろそろいいかなと。で、ちょっと飲食関係やってみたいなと思ったんですよ。この辺、食堂もあんまりないんで。
母さん(妻)が料理上手だったから、少しずつ教えてもらいながら店をやってみたいと思ったんです。最初は反対されてたんですよ、「こんな過酷なもの(商売)」って。6年かけて説得した(笑)。
母さんは料理の才能があったというか、すごく手早かったんで。前に、別の食堂が閉める時に次の人を探していて、うちの母さんに「やらねか」って言われたことがあって。でも、断ったらしいんですよ。だから、俺が「店をやりてぇ」って言った時は、「あくまでもサポートですから」って言われた。
この店舗のオーナーがテニス仲間で面識あったので、「ここ借りてもいいですかね?」って言って。「誰か人を使うの?」って聞かれたから「私やります」って言って、そんな感じで始まった。
もともと飲食店だったから設備はだいたいそろっていたんだけども、厨房のエアコンや冷蔵庫がダメであったり、使ってる間に給湯器が壊れたり、いろいろ支出はあって。少しあった蓄えで整えました。ログハウス風で、もともと薪ストーブはあったし、中はほとんど変わってないですね。
ここ断られたら他のことやるかなと思ったけど、ここ決まって良かったなと思います。実家はここから2kmほど奥の長瀞だから、店を開くなら地元以外の選択肢はなかったですね。
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薪ストーブのある山小屋風の店内
職人仕事に向いていると思う
3カ月くらいの準備期間を経て、去年の6月28日にオープンしました。まもなく1年になるのかな。オープンして最初はものすごい忙しかったけども、少しずつ落ち着いてきて、最近はリピーターで来てくれる人もいるんで助かってます。あんまり人が来ないのも困るけど、人が多過ぎる時に2人っきりだと、洗い物だけどんどん増えていくんですよ。洗ってる暇ねくなって、食器がねくなっていく。そういう時はお手伝いのスタッフを頼んでいます。
年金(支給日)のあととか、祭日の月曜日はお客さんが多いような気がする。あとは、山。岳(藤里駒ヶ岳)の紅葉の季節は、やっぱりたくさん来るんですよ。
母さんは直売所にも行ってるし、彼岸の団子も作ってるんで、休む日も多いんですよ。だからお手伝いのスタッフ2人に変わりばんこで来てもらうんです。料理は私が作ってます。
この店を始めてから、一番違うのは気持ちかな。忙しさは同じでも、気持ちが全然違いますね。建設業の時は「俺はこの仕事、向いてねえんでねえかなぁ」と思いながら43年やってました。
もともとは職人みたいな仕事、型枠とかがちょっと得意で。型枠作ってコンクリ流して、っていうのが向いてあったけども、会社が望むのは「現場管理せい」って。まあ、型枠作ったり現場管理したりしてました。
職人の方が合ってる気持ちがあったので、料理も向いてるんでねぇか、って思ったんですよ。料理って職人ですよね。
オムライスはイチオシ!

「オムライスプレート(スープ・サラダ・小鉢・漬物・ゼリー付き)」1,100円
もともと料理人でなくドカタであったんで、“専門店”だばできないんです。だから、(メニューを)いっぺ出してごまかしてる(笑)。
最初の頃は生姜焼きがよく出たんですけど、今は揚げ物とかがよく出ますね。カツカレーとかカツ丼とか。キーマカレーは、夏のメニューです。夏野菜の素揚げ付けて。パプリカとかナスとかカボチャとか素揚げして、赤・緑・紫・黄色もあって色映えて、すごい綺麗になる。母さんのアイデアなんですよ。
オムライスは、イチオシです。山の形にしてる。でも目標は、パッカンとなるやつ(中からとろりと半熟卵があふれる、ふわとろのタイプ)です。少しずつ練習しようかなと思って、オムライスの卵余ったらやるかな。なぜ、ああやって、ふわふわっと回っていくのかなと思って。まあ、練習あるのみでしょうね。できそうな感じはしてるんですよ、まだ形が悪いんですけど。

オムライスの卵は、菜箸を使ってクルクル回しながら山の形に仕上げていくのが現在のスタイル
下処理は朝来てやるんだすばって、それはだいぶ早くなったすね。最初は母さんと2人で朝4時半ごろから7時までやってたけれど、今は1人でいいですよ。味噌汁とかスープ、オムライス用の卵は溶いたあと置かねばねぇから朝に作る。あとは、米もといで。それだけなんですけども、最初の頃はけっこう時間かかって。今は、ささっと1時間ぐらいでできるようになったな。
実家に90歳と91歳の両親がいるんで、朝来て下処理したあと、一度家さ戻るんですよ。両親にご飯食べさせないといけないから。母さんも直売所の仕事があって、朝から忙しいからね。
野菜は直売所から仕入れたりして。お肉関係は、白神牛はなかなか買えないから、地元のものとはいかないけども、宮野さんの羊(※)ができたらそれも使えたらいいかな。
新メニューは毎月出してる。今日も新メニューが出たよ。メロンフロートって、メロンソーダの上にアイス乗せてみた。ある程度1年回ったから、あとは夏メニューと冬メニューを変えていけば、そうそう新メニューってねえかな。
※ 2021年に群馬県から藤里町に移住した宮野さん一家が、食肉用の羊を飼育する「宮の羊の牧場」を町内に開業した。現在、飼育頭数や出荷数を順調に増やしている。
宴会や夜の営業もしていきたい
そのうち、夜の営業もしたいと思っていて、ここで宴会メニューみたいなこともやりたいなと。この前、定休日の水曜日のお昼に貸切で宴会メニューやらせていただいて。コースで2,000円にコーヒーをつけて出しました。そういうのも今後やっていきたいですね。

貸切の日のランチお任せコース。この日は、1人2,000円
農作業との両立は、今まで(会社勤めの頃)と変わらないです。田植えは2日で終わるから、定休日にやるんですけど、秋の稲刈りの時期は1週間休むなぁ。稲刈って、乾燥して、いろいろ作業あるんで、若干休まさるかな。草刈りとかそういうのは、水木の休みを使って大丈夫だと思うんですよね。
若ければ、「(休みの日には)ここさ行きてえ」ってなる。でも、この歳になれば物欲も無くなって、休みもなんもいらねえ(笑)。
月並みですけど、お客さんからの「おいしかったよ」「また来るよ」っていう言葉が、やっぱり一番嬉しいですね。「しょっぺかった」って言われて残した時は、凹んでしまう。改良せねば、って。
今、これからラーメンやりたいなって思うんだけど、母さんには反対されてる(笑)。母さんが作ってるチャーシューが美味しいんで、それをなんとか作れるようになれればいいなって思ってます。

「ホルモン単品」500円。テイクアウトもできる
(後編へ続く)
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聞き手&書き手:島田 真紀子(しまだ・まきこ)
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有限会社無明舎出版 勤務を経て、2012年からフリーライターとして雑誌・WEBなどの記事を執筆。
秋田県を中心に、観光・食・子育て・スポーツ・医療などについて発信しています。大館市在住。
知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。
このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。
藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115
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