だって好きだもの
【前編】
名人:市川 サツ(いちかわ さつ)秋田県山本郡藤里町
高校生:後藤 弘大(ごとう こうだい)宮城県古川高等学校2年

名人と一緒に
1.自己紹介
市川サツです。生まれは昭和14年の12月の15日。85だよ。実家は貧しかったために仲人に「一人でも飯食える所さ、けで(くれて)やればどんだが」って言われで、山奥まで嫁さ来たの。今考えてみれば、よぐ親の言うごど聞いで来たど思う。私の父親は松橋勘吉。母は松橋スヱ。8人兄妹で、自分が3つなれば(下の兄妹が)また生まれる、6つなればまた生まれるだったなあ。私は中頃の4番目か。1番上が長男でなんもあと全部女の子。みんな健康でまず育ったった。金沢(かねざわ)小学校であったな。中学校もそこ。私たちはそこで卒業したの。そして実家のお米を手伝っていたの。どっちかっていったら私は兄妹のなかでも大人しかった。ただ単に仕事のことだけを考えながら生きてきたって感じだな。今、うちでは息子夫婦と私だけの3人暮らしなの。
2.白神山地を有する藤里町の自然
ほんとに恵まれたところで生活してる。まず喜ばれる水だったもんねえ。ここでおいしいものができる一番の理由は湧き出る水のせいなんだって。なんぼ干ばつでも水はある。水もきれいだべし、水入って来ないってこともないし。ほんとにまず水に恵まれてたったね。ほんっとに水足らねえしって駄目になったとかってそういう失敗は一つもない。私はここの自然が好きだったから。この藤里を離れたくないんだよね。

作業場近くを流れる湧き水
3.「わさびは最高良いごった」
(1)わさびとの出会い
50ぐらいのときからわさびはじめてもう40年もなったでば。田んぼもやってて、(舅)爺さんとやってた。わさびは花咲くんだよ。白くてかわいい花咲くの。でも、見てる暇もねく、わさびの花もまたみんな売って欲しい人あって10センチくらいの大きさにして採るの。捨てるとこ一つもねえ。私が最初に始めたのがわさびなの。藤里の役場のほうで水が良いために良く育つようだからやってくれないかっていうのでやってみました。ここのわさびおいしいってよく喜ばれるの。

植えて2年になったわさび。収穫時期になっている
(2)苗
山梨県のほうから苗は注文して、毎年新しい苗で植えてます。真妻(まづま)っていうんだっけ。その苗買って。すごい高いのそれがまた。4,000円から5,000円もするったな。最初、役場に紹介してもらった苗は岩手県のほうから来たけど今と種類全然ちがう。岩手でわさび栽培しているところ、どんどん辞めだったもんね。苗も買えなくなったもん。植える苗がなくなって大変だということで、山梨のほうから注文して買ったの。下手なところさ植えてはだめだよって山梨の人がわざわざ言いに藤里まで来たったって。岩手のは葉っぱがおっきいけどイモ(根茎のこと)があまりおいしくなかったっけ。今のやつはすごくおいしいわさびだわ。岩手のわさびはすりおろしても大根みたいにガリガリして見栄えがなくて。
(3)苦労もあったったな
一回ビニールハウス飛ばされたこともあるったしな。いやいやいや。今のビニールハウスと違って昔のビニールってなピリピリピリと裂けてな。20年前の話なんでねえべか。丸々一棟風当りのいいところが破れたった。わさびが雪に潰されてめちゃくちゃよ。今のハウスもボロボロになってきたんだよな。ビニールも変えなきゃいけないたって、それどうしようかなとは思った。骨もボロボロなってきてみんな劣化してきているから、この先どうするべがなとは思ってるの。

老朽化が進むわさびのハウス。暑さ対策でシートに覆われている
(4)サツさんのわさびのおすすめの食べ方
わさびの葉っぱと根っこを細かく刻んで、ジャムの瓶に3分の1か半分くらい具入れて、熱湯しゅっとかけて蓋してすぐ冷や水さ入れておくの。冷まったら冷蔵庫さ入れて一晩置けば朝、甘く辛くおいしいもの出来てるの。それを鶏の吸い物さ入れて食べると最高おいしいの。あとはわさび味噌っていうやつを作ってるから。わさびの根っこだの葉っぱだのみんな混ぜたのを、味噌と混ぜて温かいごはんさつけて食べると最高おいしいんで、暇なとき作ってるんだ。
テレビさ出る人だの何回も来て。NHKだとかもいろいろ来たった。その時、鶏の吸い物なんか作ったりして、わさび入れて、食べてもらったったな。おいしいってすごい喜んであった。わさびのハウスさ茣蓙(ござ)ひいて座ってやったときもあったなあ。今も忘れねえったって。
【取材日:2025年9月21日、10月17日】
【名人プロフィール】

氏名:市川 サツ
ふりがな:いちかわ さつ
生年月日:昭和14年12月15日
年齢:86歳
職業:野菜栽培
略歴:昭和14年12月15日に秋田県藤里町で生まれ、幼い頃から実家の田んぼなどの農作業を手伝うだけではなく家計を助けるため、奉公に出て下働きなどの仕事もしていた。湧き水の水質の良さから町で試験的に行われていたわさび栽培を勧められる。その後も多くの人との関わりがありセリやクレソンの栽培を始め、現在も多くの方々に愛されながら栽培し続けている。藤里町にある「白神山地森のえき」ではサツさんが栽培しているクレソンと町特産のラム肉を使用したラムクレ丼が人気。
(後編へ続く)
*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496
知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。
このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。
藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115
*白神山地ふじさとのストーリーが届くフェイスブックはこちらです*
フォローすると定期的にストーリーが届きます
https://www.facebook.com/fujisato.syoukoukankou






































