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【特集】旅する藤里 「市川サツ」聞き書き甲子園参加作品 後編

だって好きだもの
 

【後編】




名人:市川 サツ(いちかわ さつ)秋田県山本郡藤里町
高校生:後藤 弘大(ごとう こうだい)宮城県古川高等学校 2年




名人と一緒に




 4.「セリやろうっていう事業家なんだべね」


(1)セリとの出会い

 セリは好きです。昔、私嫁に来たときは田んぼ2町分(1町で約10,000平方メートル(3,000坪)。野球グラウンド1つ分相当)もあって米作りを舅さんもみんな元気でやってたんだけど、みんな亡くなったの。私は一人で田んぼ(米)作れないから、それで全部田んぼやめてしまったの。セリは好きだからちょっとやってみたかったの。セリっていうのは(立春から数えて)210日後先に植えるもんだって昔の人から言われて、確かにその通りだ。210日って暦にあるの。それからまるっと2か月あれば収穫なるって。それこそ舅さんが亡くなってから、私がセリをやるって考えただけ。田んぼ作れないためにやっぱ先祖さ申し訳ながった。セリだけは趣味みたいなもんでやってるだけ。セリ栽培している人は藤里で今は誰もいねえ。私のセリでねば駄目だって、しゃべられる。それでやりがいがあって頑張ってるとこだ。





セリ用ハウスの前にて



(2)栽培

 今の時期(10月)は茎と葉っぱだけ付けて売ってる。あんまり根元からは採ってねえな。やっこい(秋田弁でやわらかいの意味)のを取ってるの。増やそうかなって最初ハウス2棟だったのが、1棟増やして2棟増やしてって今になってる。ハウスは今、ちっちゃいやつ3棟に大きいやつ3棟で6棟だ。ビニール張るのは私でも出来るばってほかの作業は妹さ頼んでやってもらってる。それでねば大変だったよ。除雪もしなければならないし。大雪積もったときはやっぱり人頼んで。でも、湧き水が温かいためにハウスには雪積もらないもの。下に落ちたのだけ除雪すればまず何とかなったったな。ハウスの周りは全部水が流れてくるように作って。そうすればハウスから落ちた雪がみんな溶けるように作ってるの。でも中は快適だから結構良く育つんだ。人は大変だけども。最初はセリの苗、店から束になったのを買って来て植えだった。そうやって増やしていったった。

 肥料だけを農協から買う。セリ用の肥料じゃないの。稲作る肥料だもんな。丈はなんぼでも伸びるや。これだけであとは追肥もなんもやらないの。耕したときにばらばらばらっと撒いてやればそれでいい。結構伸びるたって、30センチくらいの大きさになれば最高のいいところだ。セリの親株から種採る時だけセリを全部抜くの。210日後先の頃に植えるって昔から言われてきたから必ず1年に1回はやらないといけないの。採った苗は田んぼの畔(あぜ)に盛るの。水かけて少し芽出しさせるの。日に当たらないように何かかけてあげておくの。「芽っこちょっと出てきたな」と思ったら今度、苗を植える前に耕して。




リン酸、窒素、カリが配合された肥料。耕すときのみ使用する


母さん(サツさんの義娘)に耕耘機でバシャバシャやってもらって植えるの。土柔らかくして肥料と混ぜて柔らかくして平らにならしてその上に敷くの。芽は4日くらいで出てくるよ。ほったらかしにしていればほんとにいくらでも伸びてくるから2センチくらい出たら植えるの。気を付けてることは(出荷でセリを)洗う時に土や枯れ葉が入ってないかしっかり見て洗わなければならないことだな。季節のものでとくに正月前は一生懸命に採らなければならない。選別はあんまり細いと駄目だべし。細すぎるのはやがて太くなるから採らねえった。店に出せないものは家で食べたら良かべし、店に出せないのめったに採らないもん。




日陰において芽吹いたセリ。1株ずつ丁寧に植える


(3)サツさんのおすすめセリの食べ方

 きりたんぽが最高。きりたんぽには必ずセリでねば駄目だって、私のセリが人気ある。仙台は仙台セリって言うし、名前つけるなら横倉セリだな。そういう風につけたらいいんでねえの?

 


5.「サツさんのクレソンでねば駄目」

(1)クレソンとの出会い

 セリと同じ時期にある人が「市川家の土地にわさび植えてみたいからって山の田んぼちょっと貸してくれないか?」って言うんで、土地貸したら2年か3年かやってその人亡くなったもの。わさびの1番後ろさ青く良く生えてるのあって。「これ何だか?」って聞いたっけ、「これクレソンってこれから、流行る野菜だっておめ田んぼさ植えてみれ」って。たったそれだけでほんとに増えた。ちょうど直売所もできたしなあ。最初はクレソンなんて誰も知らねして売れねがったばって、今だばクレソン、クレソンだ。ほんとにねがったったよクレソンは藤里に。
 


(2)サツさんのおすすめのクレソンの食べ方
クレソンは生で食べればすごくおいしいんだけども、レタスとかといっしょに和えるんだよ。



たわしを使って丁寧に汚れを落とす


(3)今年の猛暑

 今は(10月)なかなか採れる量が少ない。さらに今年はみんな採れねえの。今年1日に300から500gくらいしか採れねえった。失敗しないようにやっても今年は禿げ頭(はげあたま)になったべ?それをどうしたら禿げ頭ならないようにどうするか考えていたところだ。母さんとは今年は特別だなあって二人でしゃべってあったの。土が腐ってるから、田んぼも臭かったっけ。暑さの被害は初めてだ。雨も少なかった。クレソンは3把取れれば良いほうであった。でも秋に涼しくなってくれば春まで取れるから。
業者さんも産直さ出すとすぐ買って行くんだもん。「採れねえ」って言っても聞かねえし。今は全然採れねえって。業者さんなんか東京の三ツ星レストランだとか有名なところさ卸してるみたい。大して喜ばれて「サツさんのでねば駄目だって、なんとしてでも欲しい」って言うのよ。私が直接聞ぐわげでねえけど、おいしいってしゃべられればしつこくて頭さ来るどきもあるけども買ってけるんでありがでしてら。
 


6.その他の取り組み

 マコモダケも知り合いから苗っこいただいたの。皮を剥いててんぷらにすれば、最高においしいんだ。あと、煮つけとか煮物にでもいいし。うちでは天ぷら。なんぼ食べても飽きねえんだ。トウモロコシみたいに斜めに出てくるの。無農薬。店さこのまま出せばこのまま買っていってくれるんだ。
比内地鶏30羽も飼ってて、解体してもらって冷凍しておいて食べるとき出して世話なってる人にあげたりして。卵もただの卵と違うっていうんだもん。野生の日本ぜりを刈ってって鶏さ投げてやれば食うっけよ。
 


7.今後への想い

 孫は東京にいるし、(今の仕事は)どうなるもんだべかって思ってる。人頼んでまでお母さん頑張るんだべか、それともここをほかの人に明け渡すんだべかどうしたもんだかな。誰かにただで頼むっていうわけにはいかないしね。跡を継いでくれるならやっぱり頑張る人だね。そうでねばこの仕事を務まらねえったな。



クレソンを手摘みしている様子



8.誇りと感謝

 朝起きれば山(作業場)に来ないといけないし、直売所さ行って山さ来て帰るのが私の日課であった。でも健康でねえとやってられねえもん。健康の秘訣は山に来ることでね?あとは直売所さ行ったり、みんなと話したりして。足腰が悪かったら来らいねえもん。産直が休みの時も山に来てますよ。ここいら辺では(横倉)農業やってる人がいないもんな。それはまず誇りだもんな。感謝といえば、妹がいるもんね。毎回来てもらって何かと手伝ってくれるもんな。俺の母さん(サツさんの義娘)は草刈ってくれる。あとは産直のお客さんなの。たまに注文も来るし。産直の人たちにも毎日のように世話なってるしな。
 


9.「好きだから」

 どんな大変な仕事も好きでなければ出来ないもんで、私はこの藤里の自然の中で、好きでやってることなのでほんとに辛いとも思わない。今の若い人たちには健康で何事にも努めてもらいたいとは思ったこともあるな。でもあんまり頑張りすぎても今度駄目になるから、体悪くなるんでねえかって思ったりして、それが私は心配であった。俺がやらなきゃ誰がやるってしゃべっても、ちょっと無理来るんでねえかってほんと心配であった。無理しねんで色々頑張ってほしいな。
 



【取材日:2025年9月21日、10月17日】

【名人プロフィール】



氏名:市川 サツ
ふりがな:いちかわ さつ
生年月日:昭和14年12月15日
年齢:86歳
職業:野菜栽培

略歴:昭和14年12月15日に秋田県藤里町で生まれ、幼い頃から実家の田んぼなどの農作業を手伝うだけではなく家計を助けるため、奉公に出て下働きなどの仕事もしていた。湧き水の水質の良さから町で試験的に行われていたわさび栽培を勧められる。その後も多くの人との関わりがありセリやクレソンの栽培を始め、現在も多くの方々に愛されながら栽培し続けている。藤里町にある「白神山地森のえき」ではサツさんが栽培しているクレソンと町特産のラム肉を使用したラムクレ丼が人気。
 
感想:正直、初対面の方の人生や職業をお聞きすることには抵抗を感じており、1回目の取材ではお互い緊張気味でうまく話題を深堀りすることができませんでした。前回の反省を生かし、2回目はサツさんの作業場やハウスを見学させていただきながら、積極的に自分の疑問をぶつけました。その際、サツさんから「お前さんは将来わさびを育てるのか?」と笑われました。サツさんは取材を前向きに受け入れて下さり、僕は熱意が伝わったように感じてとても嬉しくなりました。サツさんのこれまでの大変な経験を聞き取りながらも、写真撮影の際に「やだ恥ずかしい」と照れる姿にかわいらしさを感じ、サツさんのことをさらに知りたいと思う自分に気付きました。サツさんの働く環境や優しい人柄に触れることが出来たと思います。藤里の恵まれた環境で、サツさんが誇りを持って地元で愛される野菜栽培を続けていることに感動しました。自分の置かれた環境を愛し、誇りを持って物事を成し遂げようとする姿勢には、僕にも学ぶべきところがあると思いました。将来、僕も自分なりの誇りを持てる仕事を見つけ、地元の方々に愛されるような人間になりたいと感じました。

 

 



*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496




 

 


知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。

このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。

藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115


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    登山にスキー、白神山地の散策など
    ほかでは味わえない大自然の遊びがいっぱい!

    楽しい自然体験・観光施設
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    藤里の澄んだ空と水は感動の美しさ。
    露天風呂や地元の料理を楽しめます。

    風情たっぷり町の御宿
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    大量にはない、手ざわり感ある品々。
    豊かな水が生み出す自然の美味しさです。

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