山菜採りは楽しみって言えばいいのかな
名人:市川 和安(いちかわ かずやす) 秋田県山本郡藤里町
聞き手:佐藤 聖(さとう ひじり) 山形県立村山産業高等学校1年

【後編】
8.タケノコの仕立て方
タケノコの細いのは全部取ればいい。芽摘めする。芽摘み、芽を摘む。笹が厚くなるとどうしても、タケノコが細くなる。細いのは全部摘んでもいいから倒しておく。そうすると、風通しも良くなるし、歩きやすくなるし、タケノコも太いのが生えてくる。タケノコは、いくら採っても死ぬってことはないから。だから、細いのは全部折って普通の長さのは残している。タケノコがダメになるのは笹刈るから。刈ったら根っこが死んじゃう。タケノコは根っこでつながってるから笹枯れちゃうとタケノコが出ることはなくなる。全く生えてこないわけじゃないけど、ほぼ生えてこない。根っこが枯れたら生えてこないのは確か。それはどんな山菜でも、植物でも同じ。
9.ボンナとシドケの仕立て方
ボンナもシドケもそうなんだけど、ポキポキポキポキって折るじゃん。折ったら切り口を潰せばいい。シドケもボンナも中に穴開いていて、切り口がねストロー状になってる。採ったときにそのままにしとくとそこから雨水とかが入っていって根っこが死んじゃう。根が枯れるとダメになる。だから切ったら、踏みつぶしても良いから、そこから水が入らないようにする。これね俺、人から聞いたんだよ。その方がいいよって。だから、そのようにしたら、確かに死ぬことがない。これは教えてもらったのと自分の経験だから、必ずしもそうなるとは言えないけどその確率は高い。良いものが生えてくるところだと、良いものがまた生えてくるから、やっぱり正解かなあって思う。だから、人の話もちゃんと聞いて、良いことは真似すれば良いし、ダメなことはやらなければいいだろうし。
10.キノコの仕立て方
木に生えるキノコってあるじゃん。サワモダシだとかナメコだとか。例えば、腐ってて手付けられないときってあるじゃん。行くのが遅れて。そういうときってね、全部剝いだ方が良い。そうしないと木腐っちゃう。腐ったのを放っておくとね、やっぱり菌が回るのが早いんだ。余程良い木じゃない限りはそんなそんなに何年も持たないからね。肩幅くらいのこんな大きい木に生えるって滅多にないから。大体の小さい木は、3,4年くらいで腐って全部ダメになっちゃうから。まして、地面にべっちゃりくっついてる。そしたら下の方から腐ってくるから、俺はそうやって剥いでる。長持ちさせたいから。
キノコが生える木は太さは関係ない。まずは枯れてる木。生きてる木にも生えるけど、それは生きてる木の枯れた枝だとかに生えるから、枯れてないと生えないって考えた方が良い。俺がよく採るのはサワモダシ、ナメコ、ムキダケ、ハタケシメジ、カノカの5種類かな。ハタケシメジは地面に生える。サワモダシはなんの木でも生える。ナメコはブナとか柔らかい木に生える。ムキダケもブナでもナラでもなんでも生える。だからナラの木とブナの木にはキノコが生えるって考えると良い。


ムキダケ。毒キノコのツキヨタケをムキダケと間違うことがある
そして基本的に夏頃の台風などで倒れた木には生えない。一番良いのは冬に倒れた木。原木栽培の木にキノコの菌打ち付けるのって3月か4月でしょ。あの木って、倒すのが11月からなんだよ。11月頃って木が水を吸わなくなるとき。すると葉っぱが落ちるんだよね。そういう木でないと、キノコの菌打ち付けても生えないんだ。キノコ栽培する人は11月から2月、3月頃までに倒してる。だから自然に生えてるキノコも、冬に雪や風で倒れたりした木に生えてる。そういう木を見つけた方がキノコを見つける確率は高い。夏の台風なんかで倒れた木は毒キノコしか生えない。一番生えているのがツキヨタケ。あれはどんな木にでも生える。毒キノコも生えなくなったらその木はダメよ。

ナメコ。写真のナメコは1センチ程の小さいサイズ

ナメコを採る市川さん

黒くて大きなツキヨタケ

軸が付いているのがツキヨタケ(下)。付いていないのがムキダケ。(上)
11.山菜採りの道具
道具はね、ボンナとシドケ採るときとウド採るときに稲刈り鎌を使う。ウドを採るときは地面掘らないといけないし、ボンナとかシドケとかは、折った後に切り口をキレイにしないといけないから稲刈り鎌を使っている。持ち運びも楽だし安くて切れるからね。あとはクマよけの鈴付けたり、リュック、腰に付けるカゴとか。危険なところ歩くからヘルメットもかぶっていく。滑らないようにスパイク付きの長靴。あと、クマよけの爆竹。山を下りるときに爆竹鳴らす。林や笹薮の中では鳴らさない。火使うから、危なくて。雨降っても笹は脂っ気あるから燃える危険性が高い。だから、俺は蚊取り線香も持って歩かないんだよ。あと、運動会のときに鳴らす雷管ピストルも持って行ってる。この前クマ見たときに、百均のオモチャの火薬ピストル鳴らしたけど、逃げなかったんだよね。雷管ピストルは音が山の中に響くから、それを持って行ってる。

山菜を採るときに使う道具

左が火薬ピストル。右が雷管ピストル

雷管ピストルを鳴らした様子
12.山菜採りの中で心掛けてること
タケノコの細いのは全部摘んだり、ボンナだとかシドケの細いのは採らない。ボンナとシドケを採ったら、切り口を踏んで水が入らないようにする。自分のルールっていえばルールだね。産直に出すときは、自分が買わないようなものは出さない。汚いのはやっぱりダメでしょ。だから、結構名指しで注文も入って買ってくれるからね。

「朝に出荷したのにもう売れてる。」と市川さん

空いているところに市川さんのサワモダシがあった
13.競争しない方針を採る訳
競争しないって訳じゃないんだけど、仲間内で競争してもどうにもならないと思うんだよね。行った以上は空振りで帰ってきたくないから、一生懸命に探すけど。別に競争しても意味がないっていうか、同じ産直に出すんだったら競争する必要がない。産直以外に出すんだったら競争するかもしれないけども、仲間内で競争したくて採りに歩いている訳ではない。
14.山の存在
なんていうのかな、趣味の一つでもあるし、気晴らしの場所でもあるしな。楽しみの一つだよね。山菜の時期になると行きたくなるしね。注文もあるから続けてるんだよね。
【取材日:2025年9月11日、10月20日】
【名人プロフィール】

氏 名:市川和安
ふりがな:いちかわ かずやす
生年月日:昭和34年1月31日
年 齢:67歳
職 業:火葬場運営、不法投棄監視、山菜採り
略 歴:高校卒業後、上京して靴職人として7年半働く。秋田に戻ってからは工場に勤めたのちに、二ツ井町藤里町衛生事業処理一部事務組合に入る。その後独立し、火葬場の委託管理、不法投棄の監視を行っている。両親や妻が産直の会員になったのを機に、自らも産直の会員となり山菜を出荷するようになった。春は山菜、秋はキノコと季節に応じて様々な山の恵みを産直に出荷している。
【聞き書きを終えての感想】
市川さんと初めてお会いしたとき、市川さんは温かく私を迎えてくださいました。1回目の取材では、山菜やキノコについての貴重なお話を聞かせていただき、2回目の取材では、実際に山へ行ってキノコ採りの体験をさせていただいて、キノコが生えている場所を五感を通して学ぶことができました。2回目の取材で採取したナメコとムキタケは、みそ汁にして食べましたが、ナメコ特有のぬめりとムキタケの歯ごたえが最高で、とても美味しかったのを覚えています。取材を進めていく中で、市川さんの山菜に対する思いや、こだわりを感じることができ、なにごとにも信念を持って行動する大切さを学ばせていただきました。
自分もこれからの長い人生の中で、信念を持って続けたいと思えるようなことを見つけて、それに挑戦し続けていきたいなと思いました。
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知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。
このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。
藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115
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