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【特集】旅する藤里 「清流荘」後編

【後編】





 中川ツヨさん

季節を感じる清流荘の料理。料理名人の中川ツヨさんを中心に地元のお母さんたちが手がける。






 
「白神山地いやしの宿 清流荘」は、藤琴川に沿って走る道を白神山地に向かって奥へ奥へと進んでいくと、右手に見えてきます。すぐそばには、藤里町を代表するミネラルウォーター「白神山水」を製造する工場「白神山地の館」があり、その少し先は冬季通行止めになる区域で、藤里町のなかでも特に自然豊かな場所です。宿泊施設としての利用だけでなく、他ではなかなか食べられない山の恵みをふんだんに使った昼食や夕食を求めて、各地からファンがやって来ます。

 この清流荘を運営する「くまげらの会」の代表・小林幸一さん(前編)に続き、料理を担当する中川ツヨさんに、清流荘のことやご自身のことを伺いました。






中川ツヨさん
料理の話が止まらない中川ツヨさん。好奇心旺盛な性格が、心にしみる料理を生み出す。 





冠婚葬祭で食を学び、食事を作る仕事を各地で。


 
清流荘をやる前は、学校で6年小遣いさんをやってたんだ。今でいう用務員さん。家のすぐ近くに金沢小学校ってあって。子どもたちが学校で畑をやっていたから、大根葉の干したのとじゃがいもでお汁を煮てあげたりしてたの。子どもたちが「まだあるか?まだあるか?」って先を争って食べるから、いっぱい作ってあげたんだ。学校から帰ると、「学校のおばさんみたいなもの作って食べさせて」っておばあさんやお母さんに話したみたいで、「今日は何食べさせた?」と電話がかかってくることもあったよ。


 学校を卒業して、隣の能代市にある呉服屋さんに3年くらい住み込みで勤めたの。半分女中さんみたいな感じで、忙しい時は店に出たり、ちょっとミシンができたから子どもたちのスカートやブラウスを縫ったり。あと店員さんたちに三食作って食べさせたりもして、すごく勉強になったんだ。呉服屋のおばあさんが八森(能代市北部)の漁師の娘だったから、魚の料理、漬物、すごく上手で。一番勉強になって、もう少し居れば良かったなって今になればそう思うくらい、良いところに勤めた。

 昭和33年の水害で家が潰されて、どうにかこうにか小屋みたいな家を作った後に、親戚に頼まれて出稼ぎに行ったの。なかなか見ることないしって、富士山に行ったんだ。毎日風景が変わって、私にとって富士山は言葉では言い表せない。私たちの山とは全然違って圧倒された。それで、山の虜になったんだ。

 ここら辺では冠婚葬祭があれば、必ず手伝いに歩いたもんだよ。結婚式の時は3日も4日も前から行ってね。今頃の11月ぐらいは、ちょうどお嫁さんをもらう時期なの。田んぼが終わって一段落ついた時、正月前にね。10月は神無月だから、結婚式は挙げないの。保存食の塩出ししたり、魚を焼くを準備したり、酒を一升瓶に詰めたり、ニワトリ殺したり。そういうのをみんな手伝いに行ったものだ。お葬式の時は、自分の家にあるものを少しずつそこの家に持って行って手伝うの。それがすごく食べる勉強になった。

 結婚式と葬式では切り方が違ったり、つける種類が違ったり。そういうのをよく知るおばあさんたちがいて、話を聞いたり、見せてもらったり。貴重な経験だったな。お母さんやおばあさんから勉強になるから行けって言われて、私も好きだったからホイホイと喜んで手伝いに行ってたよ。中学校を卒業して2年くらい家にいる間に、ずいぶんと行かせてもらったよ。







 ミズ
ミズと呼ばれるウワバミソウの実の漬物。秋田ではミズは代表的な山菜で、秋が近づくと実も食べる。 





お客さんを迎えるギリギリまで、何を食べさせたいか迷う。


 清流荘ができた時には既に70歳だった。今は自分で歩けなくなったから大変。歩けた頃は、明日お客さんが来るとなれば、近くに行ってワラビとかフキとか採ってきて食べさせることができたけれど、今は若い人たちに採ってきてって言っても、どこに何があるか分からない。山菜多く採ったからって持ってきてくれる人も何人かいるけれど、そうでなければ買うしかなくて大変。体が痛むこともあって、娘や息子にはもう辞めたらって言われるけれど、途中で投げ出したら残った人たちがかわいそうに思って。今は送り迎えをしてもらって、あとは清流荘で座って食材を刻んで、他の人に洗ってもらったり、料理を運んでもらったりしてやってるよ。

 でもね、食べさせるのって簡単じゃない。献立考えて、山菜がある時期なら採ってもらって、秋なら山菜の塩出しして。塩出しには3日くらいかかるかな。なければ、持っていそうな人に電話して分けてもらったり。お客さんを迎えるギリギリまで、あれ食べさせたらいいか、これ食べさせたらいいかって迷う。ものがある時ならいいけれど。献立を考える時は一番先に魚を決めて、大根からワラビから、フキ、サクとかどさっと一緒に煮てね。やっぱりこういう大きい鍋で煮れば美味しいもんな。ちょこっと煮るより。

 昔から家では、大きい鍋でドンと煮たものだよ。昔は冷蔵庫も冷凍庫もなかったから、そういうのを煮ておいて、ストーブにかけてね。あと漬物とお汁があればいいでしょ。そうして食べたもんだ。煮付け、煮しめ、あとはタラを干したのとか、カスベ(エイを干したもの)とかそういうのを煮ておいたね。我が家は酒飲みのお客さんが途切れないで来る家で、家のおじいさんが営林署に勤めていた関係で、泊まる客たちやお昼に来てご飯食べる人もいたから、何かしら用意していたの。あと、昔のドサ回り。芝居とか人形芝居とか、そういうのをやっている人も泊まったりしていたなあ。

 秋は煮しめとか煮付けのほかは、きのこ。里山にあるサワモダシとかムキダケとか、きのこ7、8種類を食べさせたら、すごくお客さんが喜んで。いっぱいあるから結構てんこ盛りにして出したら、ひとつも残さないで食べていたなあ。あと豚汁にもウドとかフキとかミズの子とか入れて食べさせたよ。やっぱり何と言っても山菜だ、喜ばれるのは。

 秋になって、じんだ(ずんだ/大豆、米粉、麦粉を混ぜて団子にし、だしで炊いた、今では珍しい家庭料理)がなくなってしまったから、そろそろまとめて作らないと。一人二人だと大変だから、何人かに手伝ってもらって、焼いたり、切ったり、冷凍するのに包んだりするんだ。ただ作るだけじゃなあと思って、みんなに食べさせるようにしてるよ。年配のお母さんたちの集まりをすると、「煮付けたよ」「はい天ぷら」って持ってくるから、それも出せばいいね。正月を過ぎると漬物もそろそろ熟れる頃だから持ってくるでしょ。そうすれば、これどうやったって情報交換にもなるから、みんなでご飯を食べるようにしているんだ。

 これやってみたいなと思ったレシピは書きためて何冊かある。これは第一号のノート。数十年前のもので、ボロボロになってしまったけれど。新聞とかちょっと切り抜いてとっておいたり、あとはテレビで私もできそうだなっていうのがあれば、このメモ用紙に書いて、あとでノートに書くの。やってよかったのは清流荘で出すけれど、でもほとんど昔からのものが、無難で一番いい。あまり難しいのをやれば、お手伝いの母さんたちが慣れなくて、なかなか覚えられないから。






レシピ

中川さんが書きためてきたレシピ。今でもテレビ番組や料理の本を見て、良いと思ったものをメモする。






もう一度食べてみたい、柿の漬物。


 私が食べて一番好きなのは、山菜煮たやつ。この間も、煮付けと煮しめを久しぶりに自分たちで食べて、あー美味しいなって。一番無難で飽きないね。でも、栽培ものは食べられないなあ。今はウドまで栽培しているでしょう。息子がどこからか、生でサラダにして食べればいってもらって来たけれど、味も香りもない。栽培ものは山菜と思わない。山のウドは、切れば水に油が浮いてくるよ。それだけ甘みも苦みもあるけれど、何でも利用できるでしょ。

 漬物は、オラが落ちたら上がれないような大きい樽に、渋柿と大根、いっぱいに入れて押して漬けてね。大きなとっくり大根(漬物用の大根)を漬けて、それを長く切って焼いて食べるのが好きだったんだ、私。漬物を3cm幅、長さ10cmに切って、それを囲炉裏の丸い渡し(太い金属でできた格子状のものに脚と柄を付けた道具)ってあるでしょ。そこに置いて焼いてから細かく切ってみそ漬けとかにして、それを混ぜてお茶漬けにしたり。お茶じゃなくて湯漬け、やかんの湯だった。そうやって子どもの時食べたの。漬物焼くと、また香ばしいんだよ。

 今は柿漬けを漬ける人っていないけど、柿漬けは本当に美味しいんだ。渋を抜いたのじゃなく、本当に渋あるやつで漬けるの。漬けてある大根も美味しいけど、その柿もまた美味しいんだ。冬に漬けるから樽に氷が張るんだけど、それをカナヅチとかマサカリで壊して所々に穴開けて、あーしゃっこい(冷たい)って柿を引っ張り出してね。その大根の一本漬けの味が未だに忘れられなくて、またやりたいなーやりたいなーって今でも思い出す。ただの塩水に漬けるだけだけど、すごく美味しいの。

 今の漬物の本を見れば、熟れた柿をぐちゃぐちゃ潰してと書いてあるけど、そんなやり方じゃなかった。あの甘さは、やっぱり柿じゃないと出ない甘さだ。大根はもっと美味しい。今やれば、あれは絶対喜ばれるよ。どこの家の軒を見ても、柿なってるでしょ。柿は猿とか熊に食べられているからもったいない、漬ければいい商売になると思う。カビが生えてくるくらいに漬けておけば、フスフスフスとにおいがしてくるよ。柔らかくなってからじゃなく、葉っぱ落ちない固いうちに漬け込むの。

 いぶりがっこもいいけど、冬はいぶりがっこよりも私は柿漬け。ここの真名子地区から藤琴地区に引っ越した人たちと、たまに清流荘に集まって忘年会するの。そうすれば、その話になる。私たちの年代の人は、食べて覚えてるよ。昔の一本漬け美味しかったよねって。それを聞くと、ここの家でも漬けてたんだな、ここの家も漬けてたんだなって、私思うの。

 塩水に大根と柿と混ぜ混ぜして蓋して、石で重石しておけばいい。秋が温かいと割と早く漬かるけれど、寒いとそう簡単に熟れないから、上にカビみたいなのが張ってくるんだ。漬物でも熟れ寿司でも、上に水が上がってカビが張るくらいなれば本当にいい味。下手にまだかなまだかなって蓋を取ったりして、(柿漬けに)ヘソ曲げさせたらだめ。どぶろくだって、おーまだだべかってかき混ぜてるうちにヘソ曲げてしまう。大きい木の樽でドンと漬けておけば、本当にいい。

 他でやっているかは分からない。他に行って食べたことはないけど、ここでは漬けたもんだよ。みそ樽、しょうゆ樽とか、漬ける用の大きい木の樽があるでしょ。ああいうのに一つ漬けるんだ。横倉で畑をやっていた時は、馬とか牛とかの鞍に大根を付けて家まで運んだもんだ。絶対に柿漬け、あれは美味しいな。



(料理編へ続く)

*旅する藤里「清流荘」 料理編
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/1802












 

     ライター : 久保田真理(くぼた・まり)
  
   ライフスタイル誌の編集者、オーストラリアでの写真留学を経て、フリーランスとして独立。国内外の取材を通じて、多様な生活や文化の魅力を発信する。秋田市生まれ、茨城・千葉育ち。趣味は、日本酒、トレイルランニング、ソウルミュージックの世界に浸ること。

 




知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。

このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。

藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115




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