【後編】
レストハウス白神から徒歩30秒の場所にあるサフォークの館。団体客も収容できる広々とした空間。
藤里町の県道322号線を素波里湖方面にクルマを走らせて15分(約15km)。昭和45年(1970年)、粕毛川・藤琴川の洪水被害防止などを目的にしたダムの建設により、素波里湖とブナをはじめとする広葉樹、秋田杉に恵まれた自然公園「素波里園地(猿ヶ瀬園地)」が誕生しました。キャンプ場や芝生の多目的広場もあり、自然を満喫できる場所です。その湖のほとりに、ラーメンや定食が自慢の食堂「レストハウス白神」と珍しい羊肉が食べられる「農家レストラン サフォーク白神」(サフォークの館)があります。
この二つの飲食店を切り盛りする藤里生まれ育ちの細田薫さんに、お店のこだわり、お店を始めるまでの思い(前編)に続き、食へのこだわり、素波里の自然について伺いました。
素波里湖のそばには、浅間神社祭典・藤琴豊作踊り(駒踊り)の顔ハメパネルが!
煮干しベース、馬肉チャーシュー入りのラーメン
今年のレストハウス白神は、4月27日(土)にオープンしたので、18日から大掃除を始めて準備でした。サフォークの館もあるから自分以外にスタッフ2人が必要で人件費がかかるから、作れないものはないけれどどうやって節約したらいいか考えないといけないと思っています。ラーメンはもちろん出していきますよ。今でも希林のラーメンということで、地元の人は来てくれますから。
ラーメンのスープはまとめて30杯以上作っています。煮干しベースのスープです。昔は馬とか豚の骨でとっていましたが、今はシンプルにしています。馬の骨はアミノ酸が豊富なんですよ。あとは、馬肉のチャーシューを作りますが、時々豚チャーシューを作ることも。馬肉を食べられない人も来るので。レストハウスが休みになる冬の間にも、スープを2、3回作ることがあります。社会福祉協議会から頼まれて、半ラーメン300円で出したりね。冬場は数日前に知らせてくれれば、対応しますよ。
馬肉のチャーシューは、大きな肉をある程度のブロックに切り分けて煮込むだけ。臭み抜きと柔らかくするために、ショウガ、ニンニク、酒をたっぷり入れますね。ここと実家のふじみやとでは、馬肉の味付けが違うんですよ。
ふじみやでは、まかない丼に梅干し、紅ショウガを載せて食べていて、今年新しくできる二ツ井の道の駅(2018年夏オープン)でふじみやの馬肉弁当を出そうかなと思案中。レストハウス白神の馬肉は、ご飯に合う甘い味付けで、私が好きな味なんですよ。お年寄りでも食べやすいように柔らかくなるよう2時間くらいかけて煮ますね。能代からも買いに来てくれますよ。冷凍もできますから。
レストハウス白神で食べられる馬肉の煮付け定食は、ご飯がすすむ甘い味付け。みそ汁やおかずも藤里づくし!
子どものころから慣れ親しんだ山の恵み
レストハウスの小鉢には、なるべく季節のものを入れるようにしています。うちの山に行けば、山菜という山菜はなんでもありますから。ワサビ、ミズ、ワラビ、ボンナ、シドケ、タケノコ。ゼンマイはおばあさんの担当。ウルイはすぐのびるので一時しか食べられないの。小学校のころから、家族で1日クリ拾いをしていて、拾ったクリを乾燥させてみんなで分けて食べましたね。
素波里の方から藤里駒ヶ岳に行く登山道、樺岱(かばだい)でタケノコも採りました。昔は買わずに採って食べたもの。山菜の採り方、危ないこと、食べ方も教わって、実践しながら自然の楽しみを覚えました。蛇を見つけやすいように下から上がって、蛇がいたらよけれと親が教えてくれたし、タケノコを採れば皮をむかないと食べられないので、手伝いもしました。
きのこのことも聞いたよ。子どもはみんな、自然が好きでしたね。ちょっといいのが採りたいと思って、木につかまりながらゼンマイやワラビを採ったり、マイタケ採りに行ったことも。ナラの木の下にあって、まだ小さかったから、1週間後に大きくなるのを待って採ったこともありました。
マイタケ科のトビタケというきのこがあって、お祭りの日のお吸い物にしましたね。元々は灰色なのに、人の手が触れば黒くなる。栽培ものもあるみたいだけれど、天然ものは枯れても香りが違うの。山が好きだから、山菜も好き。店の前にボンナ、シドケが置いてあったり、畑シメジが届いたり、サワモダシを採ってきたと山好きの人が置いていくことも。店があって行けないのが分かっているので、余計に採れれば置いていってくれるの。
山の美味しいものを頂いていますね。自分でもなるべく採るようにしていますよ。去年は天然マイタケの収穫のお手伝いに行って、少し分けてもらいました。命がけで採りに行き、体にロープ巻き付けて採ったマイタケを私は引き上げる役目でした。
ホゲット定食では、藤里の野菜も山盛り付いてくる。なかでも欠かせないのは、藤里名物のマイタケ。(撮影:志鎌康平)
自然豊かな場所で、地元の野菜、山菜を食べてもらいたい
小鉢をつけるのは、山菜とか地元の野菜を食べてもらいたいから。ジンギスカンや焼肉に付ける野菜だけじゃなくて、ミズでもフキでも地元のものを食べて欲しい。缶詰にして保存することもあります。ご飯を食べに来る人は首都圏からが多いので、タイミングが合えば、その季節季節のものが出てきますよ。例えばアユとか、川蟹とか。食べたことがない、知らないと言いたくないので、地元のものは必ず口にするようにしています。あまり好きでないものは、食べたことはあるけれどちょっと好まないって言います。
スタッフは、70歳過ぎの、週3日か4日働く人が多いです。1か月前にシフトを組み、社会福祉協議会の人材派遣で若い人にも来てもらっています。昔は7、8人スタッフがいて、お客さんも30分待ちということもありましたが、大分少なくなってしまいました。今でも企業研修でたくさん人が来てくれるのはありがたいですね。
雨が降って天気が悪くなったり、お盆過ぎてもまだ暑い時は客足が遠のくので、スタッフにも休んでもらうこともあります。ここ素波里は藤琴よりも少し温度が低いんですよ。町の温度と山の温度と違うんですが、町外の人は分からないようですね。
自然の秘密がここにはたくさんあるんですよ。とにかく動物がいっぱいいて、テンが走り回る様子を見たことがあります。金色できれいだよ。あと、ヤマネが走っていくのも見た。ニホンヤマネは天然記念物なんだよね。あとはアナグマ、タヌキ、クマ、サル、アカショウビンも。カワセミの仲間でオレンジ色とか三色くらいあるのかな。
アカショウビンは5月25日前後に来て、こっちで子育てしているのか、キュロロロロと呼び合っているのが聞こえます。朝8時前と夕方に聞けるよ。天気のいい飛びやすい日に、あちこちで鳴いているのが聞こえます。東南アジアから来るみたいで、毎年楽しみにしているの。あとはウグイス。生まれたては鳴き方が下手で、ホーで止まったり、ケキョケキョって鳴いていたり。このごろは数が減ってしまったけれどね。
柔らかくてうまみが強いのに、マトンのようなクセがないホゲット。焼いて食べても脂がさっぱりとしていて、胃もたれしない。(撮影:志鎌康平)
希少なサフォーク種のホゲットをお好みの食べ方で
サフォーク白神では、ホゲット(生後1年以上2年未満の羊肉)のメニューがメインですね。食べたい人がいれば、ラムを食べることも可能です。
通常はホゲットを焼肉で食べてもらいますが、予約があればステーキでも、オーブン焼きでも用意ができます。前もって予約してもらえれば、予算に合った料理を提案することができます。一人二人で来る場合は予約なしでも大丈夫だけれど、大勢の場合は2日前までに予約をお願いできればと思います。
毎年連休になると、仙台から来る人もいるし、秋田市、青森からも肉を買いにくる人がいますね。やはり肉が好きな人にホゲットが人気。ジンギスカンの本場の北海道に行ったら、ホゲットなら素波里と言われてここに買いに来たなんて人もいます。秋田市から部下を連れてグループで1年に何度も来る人もいますし、北海道にいる企業の会長に送るという人もいます。
ホゲット定食は、一人1800円(税抜き)。今年からは、バニラアイスにふじみやのいぶりがっこ入りの販売がスタートして、定食のデザートに付けています。いぶりがっこの粒の大きさにこだわりました。バニラアイスがフロマージュのような味わいです。自然の美しい素波里に来て、藤里の美味しいものを召し上がってくださいね。
(番外編へ続く)
*旅する藤里「細田 薫さん」 番外編
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/1823
*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496
ライター : 久保田真理(くぼた・まり)
ライフスタイル誌の編集者、オーストラリアでの写真留学を経て、フリーランスとして独立。国内外の取材を通じて、多様な生活や文化の魅力を発信する。秋田市生まれ、茨城・千葉育ち。趣味は、日本酒、トレイルランニング、ソウルミュージックの世界に浸ること。
知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。
このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。
藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115
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