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【特集】旅する藤里 「白神ぶなっこ教室」前編

【前編】







ぶなっこ教室の拠点は、旧坊中小学校の校舎。近くには藤琴川が流れている。







 体験教室や棚田を守る活動を行っている「白神ぶなっこ教室」。旧坊中小学校の校舎に宿泊し、地元の食材を使った郷土料理を食べながら藤里の暮らしを体験できるツアーを通じて、藤里の自然の素晴らしさ、ここで生きる人々の強さを伝え続けています。これを主催する佐尾和子さんは、東京都世田谷区出身。ブナの木へのあこがれから藤里町を知り、関わり始めて30年になりました。

 佐尾さんの藤里との出会い、佐尾さんご自身の価値観などについて伺いました。







東京・高田馬場で出版社を営む佐尾和子さんの事務所にて。環境に関する本がたくさん!






藤里との出会いはブナへのあこがれがきっかけだった


 藤里を知って30年、私の人生の3分の1以上は藤里と関わってきました。鳥取県大山の麓で息をのむほど美しいブナの森に出会い、写真集『滅びゆくブナ』(現『母なる森 ブナ』)で青秋林道のことを知って、危機を迎えているブナがどうなっているのかこの目で確かめたいと藤里を訪ねたのが始まりでした。

 でも、ブナだけだったら、こんなに長く藤里と関わることはなかった。鎌田孝一さん、市川善吉さんという人とのつながりがあったから、これだけ通うことになりました。私のなかで人とブナの区別がないですね。木も人も生きているもの。たくさんのことを教えてもらった二人には、感謝してもしきれません。

 白神山地を通る青秋林道の建設反対運動の中心は鎌田さんでしたが、そういう方だと知らず、知人に教えられて連絡をしました。ここに来るなら2泊しなさいと言われて、犬を連れてクルマで向かい、夜に東京を出て朝に藤里に着いてそのまま登山に行って、藤駒荘(今の湯元 和みの湯)に泊まるようなことをしてましたね。








主に首都圏から移住体験ツアーに参加。雪にすっぽりと覆われた世界に、子どもたちは大喜びで遊び続ける。 





 ぶなっこ教室で藤里に行くようになったら一人で10時間かけて運転することもあり、帰りに疲れてサービスエリアで寝たら朝になっていたこともありました。さすがに娘にもうやめなさいと言われて、飛行機&レンターで行くようになりましたけれど(笑)。

 娘が小学5、6年生のころから夏休みに長い旅行に出るようになり、鳥取でブナを見たのが中学2年生のころ、そして翌年に藤里でブナに出会いました。今、関東に住んでいる孫が中学2年生になり、今年の移住体験ツアーの時に手伝いに来てくれました。小学生のころに友だちを連れて夏の学校に参加したり、秋の学校の稲刈りには何度も来ています。ぶなっこ教室の立ち上げ準備をしている時には0歳でしたが、今では自分から行きたいと言って参加してくれます。








ぶなっこ教室では自然体験だけでなく、寝食もともにして藤里の暮らしを丸ごと体験する。お酒を飲みながらいろんなことを語る時間に。






小学校の取り壊しがぶなっこ教室を始めるきっかけに 


 ぶなっこ教室は、2003年にお試し教室を一度して諸々の準備を始め、翌年5月にスタートしました。そのころ、東京で出版社も立ち上げて、二足のわらじで大変でしたね。そもそもぶなっこ教室を始めたのは、旧坊中小学校が2000年に廃校になった後も解体されずに残され、藤里の家に行く途中だったのでその存在が気になっていました。

 仕事の関係で長野の廃校に泊まったり、高知の四万十川のほとりにある宿泊施設となった小学校跡を見学したりして校舎の利用方法に感心していたこともあり、あの学校もったいないなあと思っていたんですね。

 私が平成14年(2002年)に藤里小学校町総合開発センターで講演をした後に、旧坊中小学校が解体されると知り、鎌田さんたちに自然教室をやりましょうと声をかけました。今思うと、無謀だったんですよねえ(笑)。町に貸してほしいとお願いしたら、買い取るならいいと言われて。事業を止める時に建物を解体して返すことを条件に、校舎だけ買い取りました。

 宿泊してみんなで同じ釜の飯を食べながら暮らす体験ができることを、ひとつのコンセプトに決めましたが、買い取った校舎が木造なので消防法が厳しくて、許可を取るのが大変でした。消防法通りにすると学校の姿が残らなくなってしまう。なんとか残した形は何かを考えるのに1年もかかってしまいました。ちょうどそのころに農家民宿の規制が緩和されたこともあり、宿泊許可が1階部分だけ取れて、2階を展示施設として使うことになりました。






藤里で捕れたアユや、だまっこ鍋、ゼンマイとタケノコの煮物など、藤里の恵みが詰まったお膳。ここでしか食べられないものばかり。





本当の豊かさはここにある


 自然教室を始めようと思ったのは、自分たちの経験からです。何の縁もなかったのに藤里に来て、鎌田さんからいろいろな人を紹介してもらい、藤駒荘(湯元 和みの湯の前身)の料理が抜群に美味しかった。美味しいものを食べながらいろんな話を聞き、人生観・価値観を変えるような学びを受けました。豊かさって何だろう、都会の豊かさとは違う、本当の豊かさはこういうところにあると思いました。

 地に根ざした鎌田さん、市川さんは、大地のなかから出てきたと感じたんですね。何も知らない都会の人間に少しでもそういう体験をしてもらえる場所を、と思ったのが発足のきっかけでした。友だちや知り合いを誘って連れて行くと喜んで帰った体験もあり、拠点があれば町の活性化のひとつになると思いました。儲からなくて大変だけれど、当初思った規模にもなっていないけれど、町の活性化と直結することだと思っています。

 都会の尺度ではかってはいけないという価値観をより強く持ちました。例えば、知識ひとつにしても都会の知識は机上のもの、頭から入ったもので、鎌田さん、市川さんの二人をはじめ、鎌田さんが代表を務める「秋田自然を守る友の会」の人たちは生きているところに根ざした生活を送り、こうした環境から得た知識を持ち合わせ、自分の言葉でものごとを語れたり、自分で理論づけたりできて、あらゆることが理にかなっています。

 そこには都会にいたら見えないものがあり、環境問題はあちこちでいろいろ起きているけれど、本当は地元の人しかよく分からない。自分の環境を知っている人が動いてこそ土台が守られる、と私自身が環境問題に取り組んできたので、痛切にそれを感じました。フィールドワークは必要だと頭だと分かっていたけれど、生きて構築することが一番強い、大きなことなんだと思いました。



(後編へ続く)

*旅する藤里「白神ぶなっこ教室」 後編
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/1821




*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496








 
 

     ライター : 久保田真理(くぼた・まり)
  
   ライフスタイル誌の編集者、オーストラリアでの写真留学を経て、フリーランスとして独立。国内外の取材を通じて、多様な生活や文化の魅力を発信する。秋田市生まれ、茨城・千葉育ち。趣味は、日本酒、トレイルランニング、ソウルミュージックの世界に浸ること。

 

知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。

このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。

藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115



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    登山にスキー、白神山地の散策など
    ほかでは味わえない大自然の遊びがいっぱい!

    楽しい自然体験・観光施設
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    藤里の澄んだ空と水は感動の美しさ。
    露天風呂や地元の料理を楽しめます。

    風情たっぷり町の御宿
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    大量にはない、手ざわり感ある品々。
    豊かな水が生み出す自然の美味しさです。

    白神の恵みがぎっしり特産品