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【特集】旅する藤里「細田 志げ子さん」後編

【後編】


 県道317号線で秋田県側から藤里町へ入って2分、産直あさひ会が運営する直売所「白神街道ふじさと」の看板が見えてきます。
 2022年からその直売所の代表を務める会長の細田志げ子さんにお話を伺いました。藤里町にお嫁さんに来た経緯【前編】に続き、後編では栽培する野菜や産直で好評の茄子の浅漬け、忙しい農業の合間の楽しみなどをご紹介します。








茄子の苗を定植する志げ子さん

 

畑仕事

 茄子はザラメと塩とミョウバン入れて、漬物に加工してて、それがよく売れる。レシピは、藤里町の先輩方が教えてくれた。町の皆さんがやってる漬ける分量っていうのがあって、最初はそれで漬けていたんだけれどもやっぱり、しょっぱいなと思って。自分で塩加減を調節したの。あと塩。ちょっと値段の高い塩、粗塩っていうか天塩っていうかそれ使っているから塩あんばいが違うのかなって思ってる。藤里に嫁に来た時からご近所さんは、みんな茄子漬って漬けてたものね。

 茄子漬は1日か2日で売り切れる量を漬ける。漬けたてのおいしいものが回転するように、7月の末から、もう、長い時は10月まで。毎日、採って、毎日、漬けてる。霜降るまで茄子を採って、霜が降ると終わり、茄子が硬くなっちゃうから。いいあんばいになればだけどね。

 病気つかないように畑には気を配ってる。茄子はちょうどいい大きさで採るから、今日は畑に行かなくてもいいかなって訳にはいかない。毎日おんなじ大きさのを採るために、毎日畑に行かなくちゃいけないの。できた茄子は艶々よ。傷つけないように。触れば、なんぼでも、くすんでしまうの。ワンタッチではないけれど、なるべく触らないように、触らないように。“かこべ(腰籠)”に入れて収穫すれば、ヘタの棘で茄子の実に傷をつけてしまうから、かこべは使わない。茄子を重ねないように平らに並べて1段ごとに新聞をひいて収穫してるの。小茄子は産直以外、JAにも出荷している。




志げ子さんが生産する、箱の中にきれいに収まる艶々の茄子


 なんか、あたし、トマトはだめなのよねぇ。実が成って、ん、もう少しで赤くなるなっと思うと、枯れてしまう、青枯れ。トマトは諦めた、3年ぐらい、5、6本作ったんだけれども。なんかあたしに向いてないみたい。おんなじ物で大量に作るほうが、手間がかからない、いろいろやると、ほら、管理が違うから難しいのよね。

 春に植えているのは、ナスとキュウリと、ズッキーニと、とうもろこしと。お盆は、花のアスター。それこそ今、定植するところだけれども。花でかなりがんばるからね、お盆は忙しいのよ。茄子もあるし。




定植したアスター苗



アスターの花


 ほとんどの野菜は自分でできる範囲で産直だけに出してる。ズッキーニはハチに任せとくと、きれいな形にならない、だから、毎朝、花が閉じる前に受粉してやって、その受粉が大変なのよねー。ハチはいるか、いないかは、わからないでしょう。受粉してあげないと、きれいな形にならないのよ、ボコッっとなったり・・・。栽培している人は、みんなこういう苦労あると思う。




志げ子さんのズッキーニ


 じゃがいもは「とうや」っていって、表面があまりぼこぼこしていない給食用に開発されたっていう息子おすすめの品種を作っている。給食センターに出すのがまず目的だから。あとは、「きたあかり」。産直はすぐ煮える「きたあかり」がよく売れる。給食は、きたあかりダメなのよ。煮崩れしちゃうから。それで男爵とか、とうやとか、たまにメークインの指定もあるけどね。私は8割、とうや。

 黒いビニールで畝を覆う黒マルチ栽培というのをやってるから、収穫はスコップも何もいらない、雨が降っても、土が硬くならないの。このマルチを剥がすと土がふわっとしたまま。だからすぐ手で掘れるっていうか。マルチは草退治も必要ないし、助かっている。

 里芋も結構やっている、キャベツも。15アールかなぁ。人参以外は全部マルチ栽培。キャベツは、10月から3月まで半年産直さ出荷できるから。キャベツはいいのよね。長くやれるから。




キャベツ畑



収穫されたキャベツ


 人参も結構ほら、長く、半年くらいは出荷できるでしょ。ズッキーニは夏だけ、7月から9月の始めまで。2か月ちょっとだもんね。じゃがいも、人参、キャベツは、しばらく出せる。ナスは何か月もないものね、7月から3か月くらいかな。

 毎年、何年も続けて、里芋とキャベツは賞をもらっている。人参はJA女性部で何度も最優秀賞をもらったことがある。












 お客さんの中には、人参嫌いだけれど、私のにんじんは食べられるって言ってくれる人もいて。アロマレッドっていう品種、すっごく、おいしいのよ。名前もいいでしょ、アロマレッド。これも息子に勧められたもの。人参臭がしないし、色もね、芯まで赤くてきれい、どうやって食べてもおいしい。人参を千切りにして炒めて卵とじみたいにした沖縄の人参しりしりとか、同じく千切りにした人参とたらこでやる人もいるね。

 家庭菜園やっている人はかなり減っちゃったね。おばあさん方がやっていたのが、おばあさんいけなくなって、もう、荒れ地、うちもそうだもの。上にあるトラクターが入れない段々畑。もうは、そのままになっちゃって。大きい畑ならトラクターは入れるけれども。鍬一本でやる家庭菜園はやってられない。時間かかって、とても、とても。大きい畑はトラクターが入れるからね、土も柔らかくなるしね。

 珍しい野菜は産直、あんまり売れないんだよね。都会の産直なら売れるだろうけれどね。田舎の産直は、あんまり。ズッキーニもこの頃やっとよく売れるようになった、最初のころはほんと売れなかった、これどうやって食べるのっていわれて、今はね、だいぶ知れ渡ったから。売れるようになったけれども。ズッキーニは炒めるのが一番簡単で、みなさんよく食べてるのかな。学校給食では、夏野菜カレーに使ってくれてるみたい。

 矢坂の畑にはね、サルは来ないのよ。サルは来ないんだけれども、アナグマ、タヌキ、キツネ、それがすごくって。矢坂にとうもろこし2千本やったとき、溝を掘ってネットを土に埋めても、穴掘って入ってくるし、最後には、かみ切って入ってくる。もう、だめ・・・。

 家の近くには、200本植えているけれども、そこには猿が来る。猿の被害は毎年。去年と一昨年は8割収穫終わった後に猿が来たから、よかったけど。猿は集団で来るからね。気が付いたときはもう終わり。ロケット花火とかも効き目がないし、どうしようもない。ネット張ったって、上から入ってくるしね。

 トウモロコシはね、みんな、ほんと、苦労しているんだぁ。植えるところがなくて。特に私は生でも食べられる、息子おすすめの「サニーショコラ」ってのを植えているから。特別おいしいんだと思う。すごく甘くてね、生でもおいしいし、茹でても、ほんの2、3分。さっと熱湯くぐせば。甘くておいしいの。

 クマは米にも来るみたいよ。それこそ、田んぼの真ん中に座り込んでかじって。食べていくだけならいいけれど、置き土産するんだって。かなりのところ、刈って捨てなくちゃいけない。臭いがもう付いちゃうから。。奥のほうに田んぼある人が言ってた。いろいろ苦労があるのよ。

 自然豊かっていうけれど、なんでこんなに動物が下りてくるようになったのかね・・・。わなをかけて捕る人が居なくなったのもあるよね。おじいさん方は、マタギじゃなくっても、ほら、たぬき、キツネとか、ワナをかけて捕ったもんだけれども。うちにも、ワナあるけれども、かけ方しらないもんね。で、ほら禁止されてんのかな、ほら、あのトラッパサミ、あーいうのは使っちゃダメなんでしょ。で、猫なんてかかったら大変だしね!結構、猫、うろちょろしているでしょ。犬はまさか離さないでしょうけどもね、猫はフリーにしている人が結構いるから。かかったら大変。

 農業日誌は、必ず、書いてる。今日は何のタネを蒔いたとか,薬何かけたとか。全部書いてある。以前は産直向けの講習会をJAでやってくれてたからね。いまそれこそコロナで講習会もなくなっちゃったけれどね。ここ2年くらい。大根にはこんな薬をかければお肌のきれいなのができるんだよーとか、そういうので教わったの。部会でも教えてくれるけれどね。使っちゃいけない薬もあるし。使える回数もちゃんと守らないと出荷できなくなる。生産履歴をちゃんと書かなくちゃいけないからね。

 朝は5時起き。夏、茄子の出荷が始まると4時。4時に起きてヤクルト配達して、毎日でないけれども、週に3回か。帰ってきて、畑行って、畑から帰ってきて、またヤクルトの現金販売行って、また帰ってきて出荷の調整したりとかって。朝はねー、朝ごはん食べる暇もない時もある。2か月間ぐらいはほんとに。夜のうちにおにぎり握っておいて、おにぎりかじりながら茄子の選別したり。夜は早くても寝るのは22時かー。夏は昼寝して20時ごろまで仕事したりするしね。

 今の夏は、暑い、暑い。エアコンつけてるよー。昼休みはエアコンつけて体ゆっくり休めてる。ここ何年間かは、すごいの。日本全体っていうか、地球全体っていうか。温度上がっているんだろうけども30度ぐらいなら仕事できるけれども、35℃とかってば、ちょっとやっぱり畑仕事はできない。昔は、それこそ開けとけば風抜けたけれど、いまはとんでもない、暑みが違うもの。エアコンつけないと、体壊しちゃう、ほんっとに。

 

忙しい中での元気の源

 畑は大変だけれども、楽しいことがあるから頑張れる大館のダックスムーンさんってグループのライブとかコンサートに行くこと。

 土曜日の12時から、FM秋田で、ランチde’ポップスという番組もやっている。ダックスムーンさん、「こころといのちを考える会サロンコンサート」ってね、毎年、藤里でも開催して下さっていたけど、いまコロナ騒ぎで、3年間中止が続いてる。6、7年のファンかなぁ夫が亡くなって、友達に誘われて行ったらもう、は、大好きになっちゃって。みんな仕事持っている4人グループ。歌、歌がいいのよ。心に染みる。

 ラジオ番組にも、月2回ぐらいは投稿するかなぁ、必ず読まれて、いつもありがとうございますって言ってもらえるから、それがもうね、なんか、楽しみになっちゃって。畑に行くときは、音楽を聴くためにウエストポーチに小さいプレーヤーを入れて持ち歩いている。畑でガンガンかけながら聴いてるよ。いまは、これが元気の源。

 歌うことが大好きで、小学校、中学校、高校、就職してからも、ずっと歌ってる。カラオケも好き。コロナになる前は友達と二人でゆとりあで4、5時間、喉枯れるまで歌ったことも何度かあったなぁ。あとは、藤里でちょっとしたバンドに加わって、矢坂や大沢の祭りとか、JA祭りで歌わせてもらったこともある。歌ったりしたのは、高橋真梨子とか中島みゆき。この写真がバンドやっていたときの写真。






 バンドで歌ってたのは、子供が小学生のころだから・・・、40歳過ぎ。いまは、毎週火曜日7時からのコーラスが楽しみ。先生が持ってくる合唱曲を歌っている。覚えるのに大変だけれど。いまメンバーは9人。昔は結構いたみたい・・・。前からやりたかったコーラスができるから、それもいま楽しい。去年はコーラスに入って3年目でやっと発表会に出席できた。コーラスデビュー。去年もやったから、今年もやれるかな。コーラスの発表会が催される町民祭はいつも10月末。できるといいなぁ。

 仕事は確かにね、きついかもしれないけれども、人生で、今が一番楽しんでるんじゃないかしらと思ってる。



 




▽旅するふじさと「細田志げ子さん」前編
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2522


*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496








聞き手&書き手:小山内歌子(おさない うたこ)

藤里町ツーリズム協議会・ツーリズム地域おこし協力隊員。青森県弘前市生まれ。
イタリアに魅せられ90年代後半に渡伊。2004年から3年前までイタリアにて体験型ツーリズムに関わる。趣味はおいしいものを食べることとワイン。




 



知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。

このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。

藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115


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    登山にスキー、白神山地の散策など
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    大量にはない、手ざわり感ある品々。
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