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【特集】旅する藤里 「細田 薫さん」前編

  【前編】







レストハウス白神は、50年以上受け継がれてきたラーメンが自慢。店内から素波里湖が見える。




 藤里町の県道322号線を素波里湖方面にクルマを走らせて15分(約15km)。昭和45年(1970年)、粕毛川・藤琴川の洪水被害防止などを目的にしたダムの建設により、素波里湖とブナをはじめとする広葉樹、秋田杉に恵まれた自然公園「素波里園地(猿ヶ瀬園地)」が誕生しました。キャンプ場や芝生の多目的広場もあり、自然を満喫できる場所です。その湖のほとりに、ラーメンや定食が自慢の食堂「レストハウス白神」と珍しい羊肉が食べられる「農家レストラン サフォーク白神」(サフォークの館)があります。

 この二つの飲食店を切り盛りする藤里生まれ育ちの細田薫さんに、お店のこだわり、お店を始めるまでの思い、食へのこだわりなどを伺いました。






農家レストラン サフォーク白神にて、ホゲット定食のホゲット肉を持つ細田薫さん。(撮影:志鎌康平)





母との思い出がある素波里でお店を続けて18年


 平成13年(2001年)から「レストハウス白神」を、平成17年(2005年)からそのすぐ隣で「農家レストラン サフォーク白神」(サフォークの館)を始めました。レストハウス白神は経営不振のために売りに出される、と実家のふじみや(藤里町にある割烹)から電話が入って知らされました。私はそのころ東京に勤めていて、電話をもらった時は家族と京都観光をしていた時でした。一緒にやればいいと言う姉に対して、いらないと返事をしたけれど、それからずっと電話がかかってきて姉の押しに負けて(笑)。入札の結果、落札することができ、慌てて開店資金を用意して始めて、もう18年になろうとしています。

 レストハウス白神ではラーメンや定食を、サフォークの館では町営の大野岱放牧場で育てているサフォーク種(英国のサフォーク州原産。頭部と脚が黒色の短い毛で覆われているのが特徴)のホゲット定食(ご飯、みそ汁、季節の野菜、小鉢、デザート付きで1800円・税抜き、要予約)などを出しています。お店は素波里湖のほとりにあり、湖を見ながら食事ができるテラスもありますよ。平成28年(2016年)からはホゲット(生後1年以上2年未満の羊肉)のソーセージの販売も始めました。







ゲットのソーセージ。希少なホゲットは通に人気の味で、北海道から買いに来た人もいるほど。(撮影:志鎌康平)





 冬になると雪で素波里湖までの道(県道322号線)が除雪されずに閉ざされてしまうので、営業できるのは半年間だけ。オープンして1か月でもう店を止めたいと思ったし、何度も止めたいと思ったけれど、ここまでくれば引っ込みがつかない。やっているうちはなんとか頑張ろうという気持ちで続けています。

 大変な仕事ではあるけれど、それでもやろうと向かっているのは、素波里が好きだから。3歳か4歳のころ、亡き母におんぶされ、古い橋の上を歩いたことを思い出します。アユが泳いでいるのを見て「かあちゃ魚」と言って、高い場所が苦手で怖い思いをしながら橋を渡りきって戻ってきたことを。ここではクマも出るし、素波里に居ることはさみしくないかと聞かれることもあるんですが、その母との思い出があるから、素波里から離れられないのだと思います。







季節ごとに表情が異なる素波里湖。昭和45年(1970年)に素波里多目的ダムの建設のために造られた。






父にラーメンのスープを教わり、店を始めた 


 以前は役場のある藤琴地区で、「希林(きりん)」というお店をお父さん(夫の力さん)と経営していました。子ども生まれて1年半後、昭和48年(1973年)8月からお父さんが亡くなる平成11年3月まで、27年お店をやりましたね。ここレストハウス白神で18年やれば、飲食業を合わせて45年やってきたことになります。そうすれば、自分なりに納得いくかなあと思っています。お父さんが亡くなった秋から東京に出て、平成13年(2001年)に戻ったので、2年だけ藤里を離れていたことになりますね。

 希林をやっていた時は、小さい町だから、コーヒーもお酒もラーメンもチャーハンも出す何でも屋でした。あと、カツカレー、五目みそラーメンも。町の人は、飲んだら必ずラーメンを食べてましたね。それぞれ、オーダーするメニューが決まっているの。私の実家は昔、肉屋をやっていて、それから食堂、割烹と業態が変化しました。父がラーメンのスープの作り方、チャーシューの作り方を私だけに教えてくれたんです。結婚する前は実家の食堂で働いていたんですが、結婚して農家に嫁ぎました。

 勧められて二ツ井に来ていた占い師にみてもらったら、牛を飼えと言われてね。お父さんは農業高校で家畜の勉強をしていたから、占い師の言葉に後押しされて、牛を飼うのにお金が必要になるから出稼ぎに行こうと埼玉の岩槻に行ったの。孫を連れて出稼ぎなんて、と実家は怒って泣いてましたね。建設業の飯場で働きました。昭和48年に帰ってくるまで働いたけれど、牛飼うほどお金をためられませんでした。3か月に一度のボーリング、町の風呂屋に週1通うのが楽しみで、ほかの遊び、買い物は一切しない生活でした。あとは、お父さんのたばこと酒、私のお菓子、子どものミルク、病弱の子どもの病院代がかかったくらい。









自慢の馬肉ラーメン。煮干しベースの澄んだスープは、素朴ながらしみじみとした味わいがある。





 そして帰ってきてから、父にラーメンのスープを教えてもらいました。廃るものがないから金物屋がいいと初めは言っていましたが、結局ラーメン屋をやることにしました。生ビールの機械、クーラーなども高かったのですが、父が保証人になり、なんでも買えと言ってくれて。そのころは、まだトレビアン(今のトレビアン食堂)もなかったんじゃないかなあ。当時、藤里初、生ビールが飲める場所だったんですよ。

 役場に勤める課長さんたちはみな、翌日の朝野球のユニフォームを持って飲みに来てましたね(笑)。青年会の集まりをやることもあったし、夜中にラーメンの配達を頼まれることも。配達に行ったお父さんが、配達先のみんなと飲んで帰ってこないなんてこともありましたよ(笑)。







 
ネマガリダケ入りのみそ汁と、焼いたマコモダケ。両レストランでは、藤里ならではのおかずが添えられる。(撮影:志鎌康平) 





スポーツを楽しみ、お店を通じて町を見てきた


 
25、26歳の時に運動したい、バレーしたいと思い、バレーボール同好会を作りました。中学校時代、バレーをやっていたんですよ。週に一度、県民スポーツ大会を目指し練習しましたね。あと、30歳まではバスケットボールも。米田の小学校で練習するお父さんについていってたら、女子もバスケットをやるようになりました。1年に一度、県民スポーツ大会があり、選抜の5人に入って出場したことも。唯一の楽しみでしたね。

 餅屋の母さんをバスケットをやったことがないのに、そこに立っていればいいっからって言って誘ったり、昔やっていた人を引っ張ってきたり。あとは、月に一度昼間に麻雀をして、そこの家のお母さんが「今日はカレーだよ」と言って昼ご飯を出してくれたり、勝った人が寿司をおごったりして。バレーとバスケットをやっていた人にもお店を使ってもらいました。仕事上の秘密だから言わないけれど、町が変わっていく様子をカウンター越しに目と耳で知っていました。それが、飲食業だからね。

 お父さんが亡くなった平成11年(1999年)3月30日、お店に町長が居たんだよね。それから1週間して店に戻ったら、コップが洗ってあって。みんなに心配かけたり、迷惑かけたりと、お世話になりました。家族がこの町にお世話になったので、自分のできる町への恩返しという思いもあり、レストハウス白神を始めて1か月で止めたいと泣いたけれど、それでもやっぱり何かの形で町の役に立ちたいと思っています。



(後編へ続く)

*旅する藤里「細田 薫さん」 後編
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/1819





*旅する藤里 まとめページへ
https://www.town.fujisato.akita.jp/kanko/notices/2496










 

     ライター : 久保田真理(くぼた・まり)
  
   ライフスタイル誌の編集者、オーストラリアでの写真留学を経て、フリーランスとして独立。国内外の取材を通じて、多様な生活や文化の魅力を発信する。秋田市生まれ、茨城・千葉育ち。趣味は、日本酒、トレイルランニング、ソウルミュージックの世界に浸ること。

 

知られざる藤里の旅は、“大切なものは何か”気付かせてくれるはずです。

このコラムは聞き書きの手法で藤里町ツーリズム協議会が制作しお届けしています。

藤里町ツーリズム協議会 電話0185-79-2115



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  • 登山にスキー、白神山地の散策など
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  • 藤里の澄んだ空と水は感動の美しさ。
    露天風呂や地元の料理を楽しめます。

  • 大量にはない、手ざわり感ある品々。
    豊かな水が生み出す自然の美味しさです。